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ジャパンレザーVOICE:放送後記

TIME&EFFORT ジャパンレザーVOICE」ダイアリー 第14回

放送後記

TIME&EFFORT ジャパンレザーVOICE
ダイアリー 14

第十四回も内容盛りだくさん!

「ジャパンレザーVOICE(#レザボイ)」第十四回を8月16日に放送いたしました。レギュラーコーナー「ジャパンレザー 旬暦」と「キーパーソンインタビュー」を隔月ごとのオンエアしておりますが、今回は「キーパーソンインタビュー」。お馴染みの村木るい氏にご登場いただきました。

前回から第二特集とエンディングコーナーをシームレスに進行。プチトピックをプラスして情報盛りだくさんに。どこよりも早い!?ジャパンレザーの最新ニュースをお届けしております。

幅広く活躍する村木氏にインタビュー

幅広く活躍する村木氏にインタビュー

レギュラーコーナー「キーパーソンインタビュー」2023年第二弾は、西日本の皮革業界の情報発信に信頼が寄せられる村木るい氏にオファー。一般社団法人日本皮革産業連合会ホームページ 公式ブログの連載をはじめ、「レザーソムリエ」皮革講座 講師、人気イベント「本日は革日和♪」の主宰・運営、「レザークラフトフェニックス」スタッフ、ものづくりなどなど・・・多方面でご活躍。皮革業界のビジネスパーソンはもちろん、クリエイター、レザークラフトファンの皆さまにエールをおくる内容をお届けいたしました。

就職活動からレザーに出会うまで

2000年代初頭、超就職氷河期で販売業や居酒屋経理などを経験後、「既存のWEB関連のプラットフォームが手がけていない、オリジナリティのある“なにか”を供給する立場になりたい」との想いから、ものづくりに着手。木工・ガラス・和紙・プラスチックなど、さまざまな素材を試すなかで、もっとも応用でき、仕事として成立する、と手応えを感じたのが、皮革。

手づくり作家として活動をはじめ、三年後に転向。人気レザークラフトショップ「レザークラフトフェニックス」のスタッフとして加入。皮革の専門知識をくわしく解説したブログが大好評。貴重な情報源としてレザークラフトファンの信頼が寄せられています。現在、ショップのWEBやイベントの運営などのほか、自分ひとりのスキルを最大限に生かすことができる請負職人として、日々ものづくりに向き合っています。

「本日は革日和♪」をはじめた
きっかけ

「どれだけネットが隆盛になっても、革という素材は手で触らないとわからない情報が多すぎます。一社単独で展示会をしても集客が難しい。革屋だけでまとまって出展しても、ユーザーにメリットを感じてもらいにくい。それならば、革・金具・工具・加工屋などが集まったほうがお客さまは楽しいだろうな」と思ったのがきっかけ。

開催すると、たちまち話題となり回を重ねるごとに規模が拡大、内容が充実していきましたが、さらなる成長を考えたとき、特定の企業に所属しているとビジネス上の都合で出展メンバーの構成に制限が出てしまうことを懸念。

「関わってくれる人、それぞれの立場や想いをコントロールすることなどはできない。いずれは自由に運営することは不可能になるときがくる。それなら個人で責任とれる形式でやろう」と独立し、本格的に始動したそうです。

皮革関連の仕事で乗り越えたい
ハードルとは?

「特に皮革だからほかと違う、と思うことはあまりないものの、一方で素材としてはかなり不安定な特性もある。だからこそ今の時代に競争相手が生じづらい素材であり、オンリーワンの製品をつくることができる」と村木氏。

そんなレザーの仕事をするなかで「失敗を恐れない」「自分の失敗は笑い飛ばせるくらい図太くなる」「でも人の失敗は笑い飛ばさない」この三つのハードルを乗り越えてほしい、との熱いエールが。皮革の仕事だけでなく、いろいろなことに当てはまる考え方ですね。

「タイムパフォーマンスとかよくいわれますが、失敗から学べることを大事にしています。関西という土地では、失敗したら“人に話せる面白いネタができたわぁ!”“それくらいできなきゃモテない!”と笑い飛ばす人が多いです。レザークラフトを仕事にするならば、“自分の失敗は笑い飛ばせる”“他人の失敗は流せる”くらいのほうがいいですよ」と村木氏。つくり手は強くやさしくありたいものですね。

人気セミナーから抜粋! 「しくじり → 成長」のポイント

人気セミナーから抜粋!
「しくじり → 成長」のポイント

「本日は革日和♪」などで村木氏が登壇し人気のセミナー「しくじりハンドメイド作家さん」から、その一部をポイント解説していただきました。

まず、「自分が何を重要視したいのか」を考えてほしいと村木氏。

「お金」「時間」「やりがい」の3つは、歪でありながらも、つり合うけれども、「お金も、時間も、やりがいも、全部ほしい!」というのはちょっと理想論すぎます。それを全部満たしている人もいますが、いろいろ問題が。

また、「企画」「営業」「デザイン」「ものづくり」も重要。

これらの要素はそれぞれプロの職業スキルです。全部一人でやる、というのは、「無理」もしくは「自分自身が消耗する」、のどちらかになってしまうことが多いと村木氏は感じているのだそうです。

「自分が何をやりたいか、を早期に見極めて、行動したほうがベター。これらをふまえた上ですが、時代が変化してもこれらをきちんと意識していたらそれほどブレません。これから怒涛の時代が来ます。AIの進歩、高齢者の職人の引退。メーカーや百貨店の存在意義・・・あらゆる物事の価値はどうなるのか?従来のビジネスや考え方が全く通用しない、エキサイティングでおもしろい時代が来ます。

そのときに自分の骨子をきちんと持っていれば、新しいことに直面しても慌てることなく、時代にあわせ自分自身を最適化することできるのでは?」(村木氏)

ビジネスネームの活用と
“愛をもつ”こと

2023年、村木氏が相談役としてサポートしているショップ「レザークラフトフェニックス」では、スタッフのビジネスネーム制がスタート。ビジネスネームとは、店内での業務および同店公式SNSアカウントの投稿などにおいて使用されるスタッフ個人の名称。アイドルやアーティストでいえば、芸名にあたり、スタッフのプライバシー、個人情報保護を目的として導入されました。

別の業界では、タクシーやバスの運転手を対象に車内での氏名掲示義務を廃止することを、2023年8月1日、国土交通省が発表しました。道路運送法などに基づく省令を同日に改正。運転手のプライバシーに配慮し、安心して働ける職場環境を整え、人手不足の解消を狙います。この流れの背景は「2024年問題」といわれ、話題になっています。

自動車運転者の時間外労働の上限は、2024年4月から原則月45時間・年360時間、臨時的特別な事情がある場合でも年960時間となり、「改善基準告示」の見直しが行われました。この改善基準告示が2024年4月から適用となるそうです。

「SNSの普及によって便利なことも増え、情報収集が格段にやりやすくなりました。どんな仕事もそうなんですが、96%のお客さまは普通に対応できます。ですが、数%は、モンスターカスタマーと呼ばれ、注意が必要。彼らからの厳しい叱責やストーカー行為に起因した、スタッフの退職対策が急務です。

この一年くらいで売り手市場となり、人手の補充も難しくなっています。会社として、働き手を大事にし、お客さまを大事にしたいからこそ、のビジネスネーム。失われた30年といわれ、低賃金のスタッフを使い捨てするという発想は完全に時代遅れ。スタッフが何人も入れ替わってもいくらでも補充できる、という時代にはもう戻りません。

それを踏まえて、“自分一人でできる仕事をやっていく”というのもアリだと思います。そうなると限界が見えてきますので、ならば“一人で稼ぐにはどうすればいいか”を考えなきゃいけません。

スタッフやビジネスパートナーがいる場合、“自分ができるからスタッフもできるはず”“自分は別に気にしない”と思うのはすごく楽です。自分に対して愛があるんだな、とは思いますが、それは一緒に働いているスタッフ・取引先やビジネスに対して愛がなさすぎです。“愛をもつ”ことが大事です。

“愛をもつ”とは別に綺麗ごとを言っているわけじゃないんです。“どれを最重要視するのか”をきちんと決めて、決して倒れない(仕事に穴を空けない)。無理をしない。自分自身やお客さま、ビジネスなどにおいてベストな状態を考えること。これらのことを考えて考えて考えて考え抜く。それが“愛をもつ”ことだと思っています」(村木氏)

今後の展望は、ものづくり業界の
「記憶を記録する」

難しいと思案しながら、村木氏が今後の展望として語ってくれたのは「記憶を記録すること」。

「靴業界って記録がきちんと残っているんですよ。動くお金がデカかったので社史や組合記録がきちんと製本されたものがありますし。しかし、タンナーや鞄や財布、ベルト、そして漉き加工や裁断屋、裁断機械などの記録はあまり残っていない。

ほかにも、動画の記録が一般的でなかった時代の、公式な記録に付随する記憶。戦後の高度成長期、好景気の雰囲気。繁盛していた事業者の機械音・作業音。車に積荷する職人たちのかけ声。靴の接着剤の匂い・・・。往時の生き生きとした空気感・時代の記憶や過ごした人の記憶が年々消えています。

どれだけネットが進化しても“当時の空気を嗅いだ人の記憶”というのは、意識的に残していかなければ消滅するのみ。当時を知る高齢となったつくり手の方々が退職・廃業なさっていますので、近い将来聞き取り調査などをしていければ。責任をもって、愛をもって遂行していきたい。“この企画を村木にやってほしい”という関係者の皆さま、バックアップ&スポンサード含め、オファーお待ちしています」(村木氏)

YouTubeでの公開動画はこちら

【MEMO】

多方面で活躍する村木氏。さまざまなフィールドで、ユーザーとビジネスパーソンを結びつけています。リアルな感覚を受け止め、日々研ぎ澄ましているからこそ、トークが鋭い!時代の半歩先の足もとを照らしてくれるようなお話が途切れなく続き、たくさんお聞きしたのですが、番組の進行上、時間の制約があるため絞り込んだ内容となってしまいました。

もっと聞きたい、と思った方も多いと思います。村木氏主催のイベント、セミナーが不定期で開催されていますので、開催概要などは、下記のリンク先をぜひ、ご参照ください。

一般社団法人 日本皮革産業連合会
ホームページ公式ブログ

https://www.jlia.or.jp/enjoy/blog/cat63/

「本日は革日和♪」

https://ccrui.sakura.ne.jp/kawabiyori/