Bag
デザインコンテスト&コンペティションの受賞作で振り返る
バッグ・クロニクル
<ジャパンレザーアワード>
現在第一線で活躍するクリエイターを輩出し続けるデザインコンテスト、デザインコンペティション。時代を先取り、未来を切り拓く作品を選出し、新たなムーブメントを発信してきました。皮革業界で代表的な“登竜門”から、平成から令和にかけての時代、鞄・バッグの潮流を振り返ります。
「ジャパンレザーアワード」の序章
日本最大規模を誇るレザープロダクトコンペティション「ジャパンレザーアワード」。
2008年にスタートし、ファッション産業である皮革産業に、その時々の消費者ニーズなどに即応できる、新たな“発想・表現”を持つ人材を育成することが重要と考え、テーマやターゲットを設定し、そのテーマなどの意を汲んでつくられる国産のなめし革を使用した作品を募集。そして、優れた作品を顕彰することで、この新たな“発想・表現”を持つ人材を育成することを目的に、毎年実施しています。
2010年度のグランプリを佐藤 直人さんがプリーツトートバッグで受賞。ファストファッションブームが社会現象となるなか、そのアンチテーゼとなる、メイドインジャパンの優れたクオリティを強く印象づけました。
女性の生き方を表現するアイコン的存在、IT(イット)バッグのニーズが底堅く、ジャパンレザーでも、海外ブランドと同等の洗練されたバッグブランドがデビューし、国内外で高く評価されています。
機能性、シンプリティの追求
2011年、東日本大震災が発生。その晩、鉄道など公共交通機関が麻痺し、徒歩での帰宅を余儀なくされた会社員が多かったことから、その体験を踏まえ、機能性、軽量性を重視した製品が大ヒット。ヒールがなく歩きやすいフラットシューズ、両手がフリーになるリュックサックがロングセラーとなり、定番アイテムに。
同じく2011年、「ジャパンレザーアワード」がリニューアルしました。ファッション性はもちろん、消費者ニーズの重視も加味。震災後の社会をとりまく環境の変化が受賞作品にも反映。2011年、12年はリュックサックが入賞、その後もリュックサックが数多く入賞しています。
ファッションでは「ノーム・コア(究極の普通)」ブームが話題に。シンプルなコーディネートがトレンドに。バッグでもシンプルなデザインが求められ、2012年、レザーの素材感を生かしたトードバッグが入賞しました。
時代に寄り添うバッグ・課題
解決型バッグ
2015年海外セレブがランドセルを愛用する写真が話題となり、ランドセルがファッション化。「大人のランドセル」がカテゴリーとして認知されるようになり、同年、ランドセルが入賞。
女性活躍推進法が施行された2016年は、俳優・タレント・モデルとして活躍する、宮瀬彩加さんがグランプリを獲得。女性のライフスタイルに着目し、メイクがしやすいバッグを開発しました。
このほか、社会問題解決型、課題解決型バッグも登場。育児に積極的なパパ(イクメン)を応援するバッグ、オフィスのドレスコードのカジュアル化に合わせた提案をするバッグも入賞しています。
バッグのミニサイズ化と財布
機能
スマートフォンの普及とともに資料のペーパーレス化が進行。バッグのサイズが小さめに。金融機関の一部では、セキュリティ強化(資料を社外持ち出し禁止)のため、A4サイズのバッグが通勤時に認められない企業もあったようです。
また、サコッシュ、ミニショルダーバッグの人気の高まりと呼応するように、財布機能を装備するバッグ製品をはじめとした、財布とバッグのジャンルの際が曖昧になり、スマートフォンケースを含めた、これらのアイテムの中間領域が拡充。そんな時代にマッチする作品が入賞しています。
「日本らしさ」の表現とウィズコロナ時代
東京オリンピック招致決定後、海外からのインバウンド消費、海外での販売を見据え、「日本らしさ」や伝統文化を意識した作品が続々。フォルム、デザインなどで和テイストを感じさせるバッグへの評価が高まりました。レーザーカッター、3Dプリンターなどの技術革新によって、表現も多彩に。
2020年、新型コロナウイルス感染拡大とともに一転。従来の価値観を見直す機運が高まりました。伝統的なものづくりの継承をはじめ、非対面非接触の推奨、新しい生活様式にマッチするプロダクトの提案も。
イベント開催ができなくなり、特に花火大会の中止で、浴衣などを着る機会が激減し花火ロスを感じるユーザーの増加や、帰省や移動、初詣さえも制限されるため、日本の伝統に触れる機会が減った反動から、ステイホームで部屋に飾っておいても楽しめるようなデザイン性に優れた作品も選出されています。