News
「靴の記念日」メモリアルイベント2019 レポート
靴の街・革の街 東京・浅草の春の恒例企画、「靴の記念日」メモリアルイベントが、今年も3月1日から28日の約1か月間、浅草文化観光センターで開催されました。著名な建築家 隈研吾さんが手がけた建物は雷門の目の前にあり、国内外から訪れる観光客のランドマークとなっています。ジャパンレザーファンをはじめ、国際色豊かな来場者が続々。連日盛況となりました。
「靴の記念日」とは?
実業家として活躍する旧佐倉藩士、西村勝三さんが明治3(1870)年3月15日、東京・築地入舟町に国内初の靴工場、伊勢勝造靴場を開設。そんな日本の靴産業がスタートした日を昭和7(1932)年、東京靴同業組合が「靴の記念日」として制定しました。
「靴の記念日メモリアルイベント」主催者の想い
「日本では古来より室内と屋外の世界は、履物のあるなしで明確に区別されてきました。明治の文明開化から150年、衣食住すべてに欧米化された今日でも"靴脱ぎライフスタイル"だけは変わりません。
草や木でできた開放性の履物、下駄や草履に長年親しむ日本人の靴に対する感覚、知識・理解は欧米とは異質。そんな民族・地域特性を背景として国内の靴と産業は、独自の進化を続け、発展しています。
産業の歴史と特性、靴に携わる人びとの想いを多様な展示やプロフェッショナルと触れ合うことでご紹介。2020年には靴業150年の節目を迎えます。
時代、社会、市場、すべてが大きく変動する中で日本の靴と産業はどんな未来を拓くのか。その夢と創造の一端をお届けしました」(シューフィル、クツミライパートナーズ 城 一生さん)
「Art of Kawakiriko 1 可能性展」
革切子のアイテムを生け花でコーディネート。生け花の師範代がライブパフォーマンスを行うなど、総合的なディレクションにより、革製品をアートへと昇華しました。
「浅草靴職人のオーダー靴製作実演」
アパレルメーカーから舞台用シューズまで幅広く製作してきた工房〈 マユ 〉、浅草伝統の職人技を生かしてハンドメイドの靴をつくる職人グループ〈 JSTF 〉、セミオーダーとフルオーダーを手がける2組のジョイント企画。
それぞれのシューズの展示はもちろん、熟練のハンドワークで魅了しました。
「森悦子個展 革盆栽」
日本独自の鑑賞鉢植え・盆栽をレザークラフト作品として再現するアート作家 森悦子さんの作品世界が会場に広がりました。独自の技法でひとつひとつ仕上げるのだそうです。
松柏類をはじめ、実物、花物も。桜からシロツメクサまで盆栽の域を超えて幅広く発表。四つ葉のクローバーを探してしまいそうになるほど、見れば見るほど本物と見まごうクオリティ。
繊細さと力強さを併せもつ存在感に目を奪われます。
「昭和の名靴 手製靴と機械靴の競演」
昭和の名靴というテーマで、大手機械靴メーカーの古典的ブランド靴、全国の靴専門店のオリジナルシューズなどを100足以上展示。
リーガルアーカイブスの貴重な所蔵品と井上 諒さんのコレクションで構成されました。
井上さんはインスタグラムの投稿が話題の27歳のコレクター。ネットオークションなどで収集した靴をこの企画のために展示協力なさったそうです。
「靴郎堂本店 シュー・ピクニック at ACTIC」
ピクニックのような感覚を楽しみながら靴をより身近に感じていただけたようです。
「靴の記念日(3月15日)トークライブ」
「We Love Shoes」をテーマに三部構成で開催。
「日本の靴産業の歴史と靴職人の系譜」(皮革産業資料館館長 稲川實さん)、「素晴らしき日本のクラフトマンシップ」(靴ジャーナリスト 大谷知子さん)、「靴オタクと日本独自の靴文化」(服飾ジャーナリスト 飯野高広さん)と、各ジャンルのスペシャリストが登壇し、日本製革靴の現在過去未来をテーマに熱いクロストークを展開。
各回とも深く掘り下げた内容で来場なさった靴好きのかたも巻き込み、会場は熱気でいっぱい。平成最後の靴の記念日を盛り上げました。
「世界の"靴づくり"動画映写会」
「靴の記念日メモリアルイベント2019」のエンディングを飾ったプログラム。靴づくりのフィルム、ビデオ、DVDを大型スクリーンで上映。モノクロ、無声映画も含まれ、なかには日本初公開となった貴重な動画も!
「〈 "靴づくり"動画・一挙8本立て映写会 〉が実現しました。産業初、浅草初、(未確認ですが)日本初の試みかもしれません」(シューフィル、クツミライパートナーズ 城 一生さん)。
シニア世代からお子さん連れ、海外のかたまで幅広いかたがご来場。立ち見のかた、真剣な眼差しで食い入るように見つめる若い世代のクリエイターたち・・・靴づくりにかける想いがバトンのように次世代へと受け継がれます。
令和最初の春を待つ、平成最後の春に相応しい歴史的な一日となりました。