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松永はきもの資料館「西洋靴150年展」レポート
日本唯一の本格的な靴履物関連博物館、松永はきもの資料館(あしあとスクエア/広島県福山市)で話題のイベント「西洋靴150年展」が10月2日からスタートしました。
松永はきもの資料館(愛称:あしあとスクエア)は1978年に日本はきもの博物館・日本郷土玩具博物館として開設され、2015年に広島県福山市が運営管理を引継ぎリニューアルオープン。福山市西部に位置する松永地域のランドマークとして市民をはじめ、周辺地域の方々に愛されている資料館です。
博物館時代から引き継いだはきもの約13,000点(内、国指定重要有形民俗文化財2,266点)、郷土玩具約18,000点の貴重な資料をはじめ、松永地域の産業を支えた下駄・い草・塩の生産関連の資料の多くを収蔵・展示。地域の歴史と文化を継承しながら、地域資源を活かしたまちづくりにも寄与する施設となるよう「松永地区まちづくり推進委員会連絡協議会」と「福山市」が協働し運営しています。
敷地内には「はきもの資料館」をはじめ、1996年(平成8年)に広島県で初めて国登録有形文化財となった「旧マルヤマ商店事務所」(大正11年建造)や下駄工場跡を利用した「伝統産業館」や、下駄職人が実際に生活をしていた「長屋」をそのまま移築保存展示も行っています。さらには芸術的に価値の高い、岡本太郎作「足あと広場」も見逃せません。
2014年(平成26年)、「旧マルヤマ商店事務所」の建物が広島県の実施した調査、"ひろしまたてものがたり"「魅力ある建築ベスト30~投票部門~」のトップテン(第8位)にランクイン。築約100年の大正時代の技巧を凝らした建物ということで、はきもの・玩具・建築・文化と見どころいっぱいです。
そして、2020年(令和2年)。日本で初めての靴工場ができて150年目となる節目の年。8月の「シューシューヒストリー・オブ・ジャパン」(東京・浅草 浅草文化観光センター)を皮切りに、「ISETAN 靴博 2020」(東京・新宿 伊勢丹新宿店本館)、「靴ミュージアム」(東京・渋谷 渋谷スクランブルスクエア)、とメモリアルイヤーに相応しいイベントが続々と東京で行われました。そして、東京以外で初の展示となるのが「西洋靴150年展」。約170点もの日本の革靴に関係する資料が紹介されています。
松永地域では、日本三大下駄産地の一つとして地域産業を支えてきました。そんな地域だからこそ、全国各地のはきもの、また日本にとどまらず、世界のはきものを文化の研究対象として収集。資料的価値の高い靴が多く集められ、業界関係者からの寄贈も行われています。
150年の歴史をパネルや年表でわかりやすく紹介。はきもの博物館時代の主任学芸員だった、故・潮田鉄雄さんが全国で集めた2,266点の国指定重要有形民俗文化財のうち明治から昭和初期の革靴を中心に普段は展示していない7点を特別展示。地元、広島県にゆかりのある若手クリエイター10人による製品の展示。国産古靴コレクターの井上諒氏の所蔵品や皮革産業資料館所蔵の「万博の靴」、リーガルアーカイブスからは国産革靴の貴重な資料を多数展示。SNSで話題になった小笠原兄弟作の戦後最高と名高い紳士手縫い靴も今回初めて東京を飛び出して展示に加わっています。東京には移動しにくい時期でもありましたので、西日本の方たちにとっては、うれしいチャンスですね。
また、近隣の府中市を拠点とするスニーカーブランド「スピングルムーヴ」のコレクションも展示しています。『備後から世界へ』を掲げ、先日、パリ・コレクションデビューを果たした、日本を代表するシューズブランドの一つです。「スピングルムーヴ」の親会社・株式会社ニチマンはゴム製造の会社でありますが、このはきもの資料館の床にはニチマン社が建設時に手がけたゴム素材の床があります。ぜひ、館内に入ったら床にもご注目ください。
こちらは1970年(昭和45年)日本航空 客室乗務員の制靴。紺のミニスカートワンピースの制服を着る際、使用されていたものだそうです。同社のユニフォームは時代をけん引する著名なクリエイターにデザイン監修を依頼していますが、当時は、森英恵さんが手がけ、話題になっていたそう。
そのニュースに着想を得て、テレビドラマ「アテンションプリーズ」(TBSテレビ系/女優・紀比呂子さん主演)が放映され、大ヒット。客室乗務員は女性の憧れの職業に。乗客の安全を守り、快適な旅を提供する彼女たちの足もとを彩ったのはポップ且つエレガントなこの一足。当時の記憶が蘇る方もいるのではないでしょうか。1969年に宇宙船アポロ11号が月に着陸しています。スペース・ルックが注目されたそう。そんな影響も見受けられます。いま見ても、ファッション性が高く、レトロフューチャー感覚が新鮮です。
松永はきもの資料館には、実際の月面着陸時に使用されたルナブーツをNASAよりお借りして、同様の素材でレプリカを作成、こちらは常設展示で、なかなか迫力があり見応えがあります。
今回の展示のなかで、ひと際目をひく、ハイヒールをまとめたコーナー。婦人靴の花形がそろい、ファッション好きの女性たちのハートをつかんでいます。憧れのハイヒール。前から見ても後ろから見てもエレガントであり、セクシー、そしてエフォートレスでありタイムレス。華やぎのあるプレゼンテーションがとても素敵です。ヒールの存在感、優れたデザインが際立ちますね。株式会社センスィミリアの蝶々を散りばめたサンダルヒールは、渋谷スクランブルスクエアでの「靴ミュージアム」展でも女性来場者から大変人気がありました。
「西洋靴150年展」は、開催直後から、テレビ・新聞をはじめ、多くのメディアで取り上げられています。その取材のひとつ「毎日新聞」の紙面で、皮革産業資料館(東京・浅草)稲川 實 副館長が「誰でも革靴が履けるようになった生産革命の歴史がよくわかる。築き上げてきた靴作りの技術を見てほしい」とコメントを寄せました。
カルチャーとしての靴、ファッションとしての靴、その歴史的に価値が高い資料であるメイドインジャパンの革靴の素晴らしさを改めて見直していただく機会にしていただけますように。GoToトラベルキャンペーンなどもご活用できますので、どうぞ、お出かけください。
松永はきもの資料館では、公式のSNSアカウントを開設。さまざまなトピックを発信していますので、こちらも併せてチェックしてください。
- 日 程:
- 10月2日(金)~12月27日(日)10:00~16:00
- 開館日:
- 金曜・土曜・日曜・祝日
- 入館料:
- 個人 300円
高校生以下無料。65歳以上の方無料
(ただし,福山市・府中市・神石高原町在住)
団体(20人以上)1名につき240円 - 住 所:
- 福山市松永町4-16-27
- 電 話:
- 084-934-6644(直通)
- WEB:
- https://www.city.fukuyama.hiroshima.jp/soshiki/matsunaga-hakimono
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