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ジャパンレザーVOICE:放送後記
放送後記
いつもご視聴いただき、ありがとうございます。10月18日(水)、「ジャパンレザーVOICE(#レザボイ)」第十六回を放送いたしました。レギュラーコーナー「ジャパンレザー 旬暦」と「キーパーソンインタビュー」を隔月ごとのオンエアしておりますが、今回は「キーパーソンインタビュー」を、waji 代表 菅野裕樹氏にご依頼いたしました。
「いつもとちょっと違う感じでしたね」とのお声をかけていただくことがありました。実は全編事前収録に挑戦してみました。これまでも「キーパーソンインタビュー」は収録なのですが、番組放送分すべて収録済みで臨むことは今回が初めてです。いかがでしたでしょうか?当番組では今後もさまざまなことに調整してまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
レギュラーコーナー「キーパーソンインタビュー」は、さまざまなプロジェクトでメディアを賑わせているものづくり集団、waji 代表 菅野裕樹氏にご登場いただきました。ものづくり集団 wajiは、これまでのバッグ業界、革小物づくりの概念を更新するような新しい取り組みを次々と発表し、話題となっています。
起業のきっかけは、「ものづくりを通じて、自分の表現を具現化し、世界を舞台に勝負したいと思ったからです」(菅野氏)。
大学で世界の伝統芸術や工芸品を研究していた菅野氏。大学を卒業後、海外の仕事ができる輸入雑貨を取り扱う専門商社にて店舗運営や新店舗開発担当を経て、100均のバイヤーに。そしてハンドバッグメーカーで生産管理を軸とした何でも屋さん(菅野氏)、マルチプレイヤーとして活動していたそうです。
「キャリアとして最も長く、今の自分のスタイルを確立できたのは100均バイヤーの経験かと思います」(菅野氏)。第一線で活躍するクリエイターやブランドを立ち上げたビジネスパーソンのご前職がバイヤーだった、ということはよく聞きますが、100均に携わっていた方は、珍しいですね。
四半世紀以上、数多くのビジネスパーソンにインタビューした経験のある、メインMC 川崎智枝氏もこのご経歴にびっくり!
1円以下の単位で徹底的にコストをコントロール。販売個数が莫大なので、利益がしっかり出るそうです。当時はハードな業務を遂行。あるときはまったく知識のなかった新しいジャンルを突然受け持つことになり、辞令の次の日には上海の見本市に行き、製品の発注をするという驚異的なスピード感。そんな日々について飄々と語ってくださいました。どんな局面でも真摯に向き合い、ポジティブに楽しく!明るいトークでしたが、乗り越えた人の説得力がありました。
着手から意思決定、販売へと続くプロセスの早さや、製品のクオリティと価格のバランス、コストパフォーマンスを追求した経験が、新しい提案・新しい価値を生み出すビジネススタイルのベースとなっているのかもしれません。今後は世界的な活動も期待されます。
続いて、会社の歴史とスタッフの皆さまとの出会いなどについてお聞きすると、「会社という言葉が日本一似合わない会社ですね」と菅野氏。
「各々が経営者感覚で仕事に携わるので、喜怒哀楽の感情を100倍味わえる、そんな組織です。もちろんチームとして協力しながら動くこともありますが、自身が起案したタスクは決裁権を与えているので、圧倒的なスピード感を持って動けるようにしています。100均バイヤー時代に中国人と商談した際、2個の耳に携帯電話を当てながら話し、日本だと3回くらいかかる商談を1回で終わらせたのが印象的だったので・・・」(菅野氏)
メンバーは20代から40代が中心。ご前職からのつながりで入社した職人、営業マンをはじめ、現在は社員・パートさん合わせて15名で活動しているそうです。独立願望のある職人やアーティストも歓迎しているので、そういったメンバーはwajiでの修行を経て、現在3名独立を叶えているのだそう。
アートに近いような幅広くクオリティの高いものづくり、活動が注目されているwajiのアトリエは、大阪市阿倍野区にある有形文化財に指定された古民家。
「この物件は仲良くしてくださる不動産屋さんの紹介で、お借りすることができました。クリエイションを刺激する空間であるとともに、和室から見える中庭や広々としたキッチンもあり、休憩時間は各々が好きな場所でくつろぐことができます」(菅野氏)。
今回のインタビューでは、背景として、アトリエの一部が映っているだけでなく、アトリエの「ルームツアー」もしていただき、その素敵な雰囲気が伝わると思います。
ぜひ、見逃し配信動画をお楽しみに。
大阪からスタートし、着実に活動の幅を広げ、いよいよ東京進出。蔵前に続く話題のエリア、清澄白河に「ジャンル無き展覧会」をオープンしました。
「wajiが提案するオリジナルアイテムをはじめ、自分たちのブランドに加え、思わず自分たちが嫉妬してしまうモノを有名無名問わずに取り扱うショップを持ちたい、というワガママから生まれました。場所は個性あふれるお店やコーヒーショップ、美術館やギャラリーなどが集い、緑豊かな文化薫る清澄白河の路地裏に面しています」(菅野氏)
ショップには、革製品だけでなく、ウェア、シューズ、帽子までと、店名の通り、ジャンルの垣根をこえた構成。バイヤーご出身だけあって、製品の目利き力は抜群。セレクトショップではなく、exhibit storeというワードセンスとコンセプトが素敵です。
限りなく透明性のあるチャリティーを行い、革製品を購入することで保護猫支援に直接つながる仕組みを構築しているブランド。猫モチーフのプロダクトは、かわいらしいデザインが多いですが、熟練の職人とデザイナーが使い勝手がいいように、そして男性も持てるようにと試作を繰り返して完成させたそうです。キュート過ぎず、大人が持ってもしっくりくるよう、色、デザイン、パターン、金具など、すべてにおいて吟味されています。
そんな価格以上の価値を実感できるプロダクトを、老舗高級ブランド出身のデザイナーと職人が上質な素材を用いて製作。7月放送分では、リール付きペンホルダーとポシェットをご紹介しました。組み合わせてカスタムできるので、使う人それぞれの個性やライフスタイルに合わせて、アレンジできるのがうれしい。ペンホルダーだけでなく、グラスホルダーとして、メガネをかけても便利です。見逃し配信動画も公開されましたので、ぜひ、チェックしてみてください。
また、猫の鳴き声をサンプリングして作曲した音源も。今回の放送でご紹介させていただきました。こちらも見逃し配信動画をお楽しみに。
大阪府堺市とのコラボレーションによる「jidai project(ジダイ プロジェクト)」がスタート。さまざまな企業や団体から提供された、役目を終えた資材を使い製品開発。掛け算により新たな価値を創造するアップサイクルプロジェクトです。
「堺市より、アップサイクルやSDGsをテーマに、若者が興味を抱くプロジェクトを立案してほしいという要望があり始動しました。“不要になったモノを欲するモノへ変換する”をコンセプトに、単に作るのではなく、足し算によって生み出しています」(菅野氏)。
経年劣化により廃棄対象となった学習椅子を施工時に残った塗料で美装。それをベースに理美容室椅子を製造する際に生じる端材(廃棄レザー)を用いて、デザインも新たにリボーン。
このほか、コーヒー問屋から提供されたコーヒー豆用の麻袋と皮革の端材の組合せによるバッグ、耐用年数を超えた廃棄予定の消防用ホースと防火衣をベースに皮革の端材でアクセントをプラスしたアイテム、過剰在庫となった制服(プリーツスカート)のデザインを生かし、バッグに仕立て直したり・・・と豊かなアイディアでサステナブルファッションを受け入れやすい楽しい提案が続々。
2023年3月25日~31日、堺市役所1階エントランスにて、同プロジェクトのお披露目となる展示会を行い、高く評価されました。
最後に今後の展望をお聞きしました。
「短期の展望は『aonecoを、衣食住を網羅したブランドにすること』、中期の展望としては『視覚障害を持ちながらプロサッカー選手としてニュージーランドで活躍する松本光平選手やホッケー女子日本代表の及川栞選手とスポーツとものづくりの力で課題解決するプロジェクトをいち早く世に出すこと』。これにはめちゃくちゃ力入れています。そして、長期の展望は『世界で勝負することです』。wajiとは“和の地から我の路を築く”が由来なので、MADE IN JAPANを誇りに、そしてそれを謳うことに責任を持ちながら、単に海外展開するのではなく、自分たちなりのやり方で夢を実現します」と菅野氏。
お話が盛り上がり過ぎて、すべてをお伝えできないのが残念です。社会問題解決型のプロジェクトを同時進行させているパワフルな活動の海外展開、ぜひ、叶えていただきたいですね。日本製革製品が世界中のレザーファンをハッピーにできますように!