Video
ジャパンレザーVOICE:放送後記
放送後記
「ジャパンレザーVOICE(#レザボイ)」セカンドシーズン第二弾となる、第十二回を6月21日に放送いたしました。今年度からスタイルが変わり、レギュラーコーナー「ジャパンレザー 旬暦」と「キーパーソンインタビュー」が隔月ごとのオンエアとなります。盛りだくさんの内容を50分にぎゅっと詰め込んで、オープニングなどは放送以来いちばんのコンパクトサイズになるなど、毎回試行錯誤と変化を続けております。ご視聴くださった皆さま、本当にありがとうございました。
レギュラーコーナー「キーパーソンインタビュー」2023年第一弾は、「.URUKUST(ウルクスト)」デザイナー 土平恭栄氏にご登場いただきました。土平氏はファッション業界、デザイン業界の第一線で活躍中のクリエイターを数多く輩出していることで知られる、東京都台東区のインキュベーション施設「台東デザイナーズビレッジ(デザビレ)」卒業生です。
企業内デザイナーとして活動後独立し、自身のブランド「.URUKUST」を始動。「つくる」をコンセプトに展開しています。ブランド名は「つくる=TSUKURU」の逆スペル。ピリオドが頭文字となっているのは、こういう意味があったとは・・・。土平氏は、このネーミングを思いつき即決だったそうです。どことなく、ドイツなどの東ヨーロッパの言語のようなニュアンスがあるのも素敵ですよね。
「なにかをつくることは今や時別なことかもしれませんが、かつてはあたりまえのように日常生活の中にありました。ものを買うことと同じように、つくる選択肢があってもいい。つくるをもっとスマートに、いまの日常に・・・」そんな想いが込められています。
プロダクトはもちろん、レザークラフトファンにお馴染みなのは、手づくりキット。発表当時、クリエイターズブランドとしては画期的な取り組みで、大きな話題となりました。
日本最大の革製品コンテスト「ジャパンレザーアワード」では、2012年度の審査員特別賞 を受賞するなど、高く評価されました。
土平氏のキャリアでご注目いただきたいのは書籍。「手縫いで作る上質な革小物」(日本ヴォーグ社)が2017年に刊行。レザークラフト初心者でも作りやすいよう、できるだけ扱いやすい工具を使い、できるだけシンプルな構造と行程で作品を提案しています。掲載アイテムは、カードケース、コインケースなど小物からバッグまで、普段使いで楽しめる24作品。
型紙の作り方から革の裁断、手縫いの方法、金具の付け方まで革小物づくりに必要なプロセスもくわしく紹介しています。使い込むほどに上品な艶と味が楽しめる上質な革でつくる、愛着を持って使える作品が満載です。国内はもとより、アメリカ、フランス、中国、台湾、韓国の翻訳版も刊行され、人気を集めています。
続いて「ミニマルスタイルの革小物」(日本ヴォーグ社)が2022年に刊行。いまの気分で使いたいレザーアイテム(19点)のつくり方をくわしく紹介。ともに、表紙はもちろん、全編の写真、ブックデザインが美しく、ものづくりに苦手意識があるビギナーも、眺めているだけで満足できるような一冊です。
カービングなどの革工芸の書籍は多くありましたが、シンプルで洗練されたデザインの革小物の手づくり提案をする書籍は非常に希少でした。趣味としてつくるレザークラフトは、武骨なものか、素朴でナチュラルなテイストの作品や書籍が多いなかで、シンプルかつクールな作風で、普段使いできるジェンダーレスなアイテム、しかも女性クリエイターによる提案、というのは、エポックメイキング的なことでした。それが、海外でも認められたというのがうれしいですね。
土平氏がインスタグラムアカウントを開設し、写真つきで投稿してからは、世界各国からコメントが寄せられ、DM(ダイレクトメッセージ)が届くように。なかには、「アトリエに行きたい」と熱意あふれるメッセージを送り、フランスから駆けつけたファンも。
「せっかく来てくれるのだから」と革小物づくりをレクチャーし、一日で完成させたそうです。その後もメッセージのやり取りが続き、「友だちと思ってくれているのかも?」(土平氏)と思わせるフレンドリーな関係を構築。言語の壁を越えて、土平氏のデザインとジャパンレザーのものづくりの魅力が世界とつながっていきます。
なお、書籍の版元、日本ヴォーグ社とは、新プロジェクトを準備中だそうです。正式発表をご期待ください!
生命に感謝して、その証としての素材を使わせていただく皮革。キズや虫刺されの跡、トラと呼ばれる縞模様など、個体それぞれの表情が豊か。「サステナブル」がキーワードとなっている現在、それらの個性がある表面を生かしたレザーを使用した製品が多くみられますが、土平氏は比較的早い時期に、ナチュラルな表面感のレザーアイテムを発表しました。
「東京産のピッグスキン(豚革)を使用したアイテムにはグラフィック(な柄)をプラスしてはいますが、キズなどの特長をそのままにしています。私はもちろん、スタッフ、ファンの皆さんのなかには、レザーにキズがあったほうが、味わい深くていい、ないと物足りない、という方もいらっしゃいます」(土平氏)。
移動制限による物流の混乱を経て、世界的に物価高騰の流れもあり、原皮の価格が値上がりしていますが、革の持ち味を見直すことによって、ストックされた皮革を生かしたものづくりもできます。発想の転換とアイディア次第でポテンシャルは無限大に広がりそうですね。
今回リアルタイム配信ではお伝えできなかったのですが、二匹の黒猫と暮らす土平さん。レザークラフトファンの皆さまには猫好きの方も多く、「ネコハラ(猫のかまって攻撃ハラスメント)」は悩ましい問題ですよね。猫への愛情と仕事をどのような想いで両立しているのか? そんなお話もお聞きしております。特別編集して、見逃し配信する可能性もありますので、ご期待ください。
YouTubeでの公開動画はこちら
【MEMO】
「.URUKUST」のプロダクトは革小物が中心ですが、バッグの新作アイテムがリリースされました。今後、ワークショップ、レッスン、スクールなどのお知らせも発表される可能性もありますので、気になる方はチェックしてみてください。