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ジャパンレザーVOICE:放送後記2P目

雨の日も真夏日も楽しめるレザーコンテンツ

雨の日も真夏日も楽しめる
レザーコンテンツ

第二特集はレギュラーコーナー「注目コンテンツDIG」。一般社団法人日本皮革産業連合会のプロジェクトおよび、皮革業界のさまざまなメディアや取り組みから、注目していただきたいコンテンツをご紹介します。今回は、「雨の日も真夏日も楽しめるオンラインミュージアム」特集です。

梅雨は革靴、革鞄の使用を控えなくてはならない時季。そんなときにこそ活用していただきたいオンラインミュージアムをピックアップ。ジャパンレザーファンだけでなく、パパママ世代のユーザーの皆さまに向け、夏休みの宿題対策としてもご提案します。

夏休みというと、ちょっと気が早いのですが、見逃し配信でご視聴くださるときには、もう梅雨明けとなっているかもしれませんね。雨の日も暑くて外出を控えたいときや、夏休みの宿題にもご活用ください。

世界のカバン博物館

世界のカバン博物館

大手鞄・バッグメーカー、エース株式会社が1975年に開設。鞄を生業とさせていただいている世の中への恩返しとして「鞄を通じて世界の風土や歴史を紹介する施設を作りたい」と創業者 新川柳作氏の思いが込められた企業博物館です。同社創業70周年の節目、2010年「世界のカバン館」から「世界のカバン博物館」へとリニューアル。2021年から館長として辣腕をふるうマーケティング本部 マーケティング部 PR・広報担当部長 難波敏史氏にお話しを伺いました。

世界のカバン博物館では、展示内容などをgoogleストリートビューと連動させ閲覧可能。幅広い世代から人気を集めています。そんな画期的なオンラインミュージアムの見どころを難波館長からコメントをお寄せいただき、おすすめコーナーを特別編集。Googleストリートビューは、「慣れるまで操作がちょっと難しい」とのご意見もありますので、見逃し動画の配信をお待ちください。

難波館長おすすめコーナー10選

カバンの歴史

古代から現代までのかばんの歴史をパネルで紹介する貴重な資料。こうして時系列で見ることがあまりないので、新鮮です。時代ごとにパネルのデザインが異なり、その時代を反映したアイテムのフォルムになっているのも注目です。

カバンの歴史
スーツケースの各パーツ

旅行に欠かせないアイテムスーツケース。安全性が重視されるアイテムがどのくらい細かなパーツでできているかを解説。約400ものパーツで組み立てられています。スーツケースのできるまでも動画で紹介しています。小さなパーツがこんなにたくさん! これを組み立ててスーツケースが完成するのですね。

スーツケースの各パーツ
船旅に使ったキャビントランク

ヨーロッパの貴族の方々の船旅は、大型のトランクに荷物を詰め込んで幾つも運び込みました。内装には細かな仕切りや引き出しがついており、機能的になっています。貴族、船旅・・・とちょっと現実には会うことがなかなかないひとたちや、体験できないことですが、このトランクにそんなストーリーがあるとは驚きです。

船旅に使ったキャビントランク
ラケットケース

ヨーロッパの貴族社会では、テニスや乗馬をたしなむ方が多く、そういった上流階級の方々が、旅先などでテニスをするという時に、ラケットを収納して持って行くためのバッグです。バッグに使用した素材はもちろん、生き方、時間の使い方、ライフスタイル自体がラグジュアリー!

ラケットケース
ワインボトルケース

昔はワインを水代わりに飲んでいたとのことで、ピクニックに行くときなどにマグナムボトル、ダブルマグナムボトルを収納したそうです。とても珍しいアイテムでした。いまでいえば、ペットボトルケースにあたるかもしれませんね。優雅なバッグはまだまだ続きます。

ワインボトルケース
イリエワニのキャビントランク

イリエワニ12匹分のクロコダイルレザーを使用したキャビントランク。世界に三個しかなく、この博物館でいちばん希少な品だそうです。博物館設立時、創業者である新川柳作氏が、フランスのモラビト社にオーダーメイドで発注。1970年代当時、数千万円もの価値があったそうです。「現在はこのgoogleストリートビューの頃とは展示方法も変わっていて、中が見えるようにしたり、補足説明を付けたりしているので、より見やすくなっています。ぜひ現在の展示も見に来てください」(難波館長)

イリエワニのキャビントランク
ゼロハリバートンの
アルミケース

アポロ計画の際に、月面着陸で月の石を拾って格納してきたトランク。気密性が高く、当時は市販されていたものにラッチを少しだけ変更したものを持って行ったという逸話が。2006年にエースが企業を買収し子会社化しています。大統領が非常時に使う特殊任務も任せられているとかいないとか・・・。

ゼロハリバートンのアルミケース
西園寺公望氏が持参した
キャビントランク

第一次世界大戦の終了後、フランス・パリで講和会議が開かれました。その際に日本の全権大使として西園寺公望(さいおんじきんもち)氏が渡仏。その際に荷物を入れたという実物の品が展示されています。西園寺氏のお孫さんから寄贈された歴史的に大変価値のあるものです。歴史の教科書に掲載されているかもしれない貴重なキャビントランク。歴史が動いた そのときの目撃者がいまも存在感を放ち続けます。

西園寺公望氏が持参したキャビントランク
日本のカバンコーナー

JRが民営化する以前の旧国鉄で使われていた救急箱や車掌が使う鞄、同じく民営化以前の郵便局員が持っていた鞄などがあります。マディソンバッグは大人世代には懐かしいアイテム。その横は初期のナイロンバッグで、ナイロンバッグはエースが最初に手がけたそうです。かつての国営企業、公共インフラ関連の企業から発注されていたとは、技術力や品質が信頼されていた証ですね。

日本のカバンコーナー
著名人からの寄贈コーナー

オリンピックをはじめ、プロとして活躍したスポーツ選手からの寄贈品が目をひきます。愛用なさったバッグ、キャリーケースはどこかご本人のお人柄が感じられて、うれしいですね。日の丸のケース:山下泰裕氏。読売巨人軍のジャイアンツマークが配された茶色いボストンバッグ:長嶋茂雄氏。緑の大きなボストンバッグ:三浦雄一郎氏。リュックキャリー:羽生結弦氏。茶色の革ボストン:アントニオ猪木氏。

著名人からの寄贈コーナー

YouTubeでの公開動画はこちら

【MEMO】

東京・浅草 駒形橋のほど近くにある世界のカバン博物館。浅草と蔵前の間にあり、どちらからも近い場所。江戸通りを挟んで向かい側には、大学芋の名店「おいもやさん興伸」があり、難波館長も手みやげとして御用達。お出かけの際はお見逃しなく。

「世界のカバン博物館」
公式ウェブサイト

https://www.ace.jp/museum/

TOKYO嚢物展

TOKYO嚢物展

東日本バッグ工業組合の企業が集まって生まれた新しいプロジェクト「BAG MAKERS TOKYO」のお披露目となる展示会「TOKYO嚢物展」が銀座伊東屋 B1 Inspiration Hall で1月27日・28日の二日間行われ、トータルで360名以上の来場を記録。外国からのお客さまも多く、銀座という立地特性もあり、約一割がインバウンドの旅行客でした。

会場では組合が所蔵する江戸から明治期に日常使いされていた袋物のアーカイブ10点を展示。それらにインスパイアされたクリエイティブディレクター・デザイナーの寺内ユミさんが職人とのコラボレーションによるバッグを発表。過去と未来の袋物を対比して並列展示しています。

二日間のみの開催でしたが、各日とも盛況で、来場できなかった方からのリクエストに応えて展覧会会場や展示コンテンツはデジタルアーカイブ化され、オンラインミュージアムに収蔵・公開。その一部をご紹介いたしました。

会場全景

まずは、会場全景を見てみましょう。会場では組合が所蔵する江戸から明治期に日常使いされていた袋物のアーカイブ10点を展示。

それらにインスパイアされたクリエイティブディレクター・デザイナーの寺内ユミさんが、職人たちとのコラボレーションによるバッグを発表。過去と未来の袋物を対比して並列展示しています。

会場エントランス側 右・中央
アーカイブ展示1

アーカイブからひとつめのご紹介は煙草入れ。江戸後期につくられたものといわれ、これらの煙草入れ、煙管(きせる)入れの製作から、ハンドバッグや革小物づくりの歴史が始まっています。

この時代にはさまざまな煙草入れがつくられ、前金具や緒締玉などに工夫を凝らしたのだそうです。煙管筒に煙管を収納し、胴体のかますには刻み煙草を入れて持ち歩いたといわれています。

アーカイブ展示1
アーカイブ展示2

続いては、三徳腰提(さんとくこしさげ)。江戸末期のものといわれています。紙入れから小銭を入れる懐中用の袋物へと変化する革小物です。懐中は、ふところのなかと書きます。ふところは、着物を着用した際の胸のあたりの内側の部分。着物の内側はポケットに使うことができる収納部分がありました。

三徳とは「三つの徳用がある」という意味があり、収納箇所が細かく分かれています。現代でいえば、3WAYといったほうがわかりやすいかもしれません。前金具は、昆虫のモチーフ。遊び心のある意匠ですね。内側をみてみると、裏地には華やかな色柄の生地が配され、袋物を使う人だけが楽しめる内装となっています。

アーカイブ展示2
コラボレーション作品A

繊月(せんげつ)。日が沈んだあとに浮かぶ、糸のように見えることがある細い月。江戸期に持ち歩いていた香袋や銭入れなど、小さなものを持ち歩くための袋物が、クリエイティブディレクター・デザイナーの寺内ユミ氏と、職人たちとのコラボレーションによってモダナイズ。

スタイリッシュなポーチとなりました。革の厚みや縫製の際に配慮がなされ、美しさを重視した仕上がりとなっているのだそうです。

コラボレーション作品A
コラボレーション作品B

文芸からJPOPまで、さまざまなジャンルで創作のモチーフとなり、人々に愛される三日月。日没後の西の空をやさしく照らします。シャープなフォルムとクールな輝きから「月の剣」とも呼ばれています。

デザインは江戸期に腰から提げていた早道(はやみち)からインスパイア。早道とは飛脚の別称。現代でいえば健脚な男性がいち早くメッセージなどを届ける、バイク便のような役割でしょうか。そんな職業をそのままアイテム名として冠している小物です。小銭をすぐ取り出せるような小物としてつくられていました。当時はそのほとんどが男性用だったそうです。

コラボレーション作品では、現代の感覚でブラッシュアップ。ジェンダーレスなデザインのミニバッグ、ウエストポーチとなりました。

コラボレーション作品B

バッグづくりのプロセスを映像に収めたコンセプトムービーが会場で上映されました。職人の確かな技術力をアピールすべく、手わざ・手もとにフォーカス。工場や台東区・墨田区の街並みと対比させ、東日本バッグ工業組合の独自性が表現されました。

この映像は、YouTubeなどの動画プラットフォームでも公開。国内外のユーザー、レザーファンに、東京のバッグ・小物づくりを知ってほしいとの願いが込められています。ウェブサイトやSNSに掲載し展覧会で上映するなど、幅広い場面でプロモーションツールとしての役割も担っているそうです。

YouTubeでの公開動画はこちら

【MEMO】

今回ご紹介した「TOKYO嚢物展」オンラインミュージアムはもちろん、放送未公開のコンセプトムービーも素敵ですので、見逃し動画とともにぜひチェックしてみてください。

「TOKYO嚢物展」
公式ウェブサイト

https://www.bagmakers.tokyo/exhibition

革鞄・ハンドバッグ特集

革鞄・ハンドバッグ特集

今回の放送でお知らせできなかったオンラインミュージアム関連コンテンツは、当サイトTIME & EFFORT 2022年 年間テーマ、「革鞄・ハンドバッグ特集」です。日本のライフスタイルを彩り、明治・昭和・平成…と時代に寄り添ってきた鞄・バッグ。その変化・進化を探りました。

テーマをふたつに分け展開。テーマ1は日本の鞄・バッグプレイバック。ランドセルにはじまり、人生のさまざまなシーンを彩る鞄・バッグ。私たちの身近なアイテムは、日本国内でどのように生まれ、つくられ、使われてきたのか、その歴史を紐解きました。

デザインコンテストの受賞作で振り返るクロニクル、エディター&コンサルタントに聞くバッグブランド<激動の平成史>、Z世代の意識の変化、土屋鞄製造所にご協力いただいたランドセルの歴史と変化など、さまざまな切り口で革鞄・バッグの歴史をお伝えしています。

テーマ2は、業界の有識者&博物館担当者に聞く 日本の鞄・バッグの現在過去未来。高度経済成長期、バブル、クリエイターブーム・・・時代を駆け抜け現在も業界を牽引する有識者、そして、時代を彩ったアーカイブを守る博物館担当者。その独自の視点から、時代背景・暮らしが紡ぐバッグ・鞄の足跡を探りました。

旭日章受章 猪瀬昇一さんや吉田カバンの創業者、父・吉田吉蔵氏のものづくりを継ぐ野谷久仁子氏のインタビューや、富田興業、バッグクラフトマスタースクール、プリンセストラヤ 袋物参考館 PRINCESS GALLERY、そして、先ほどご紹介した、エース世界のカバン博物館もご登場いただきました。

靴と比較すると、鞄・バッグの資料、アーカイブが少ないので、ファッションを学ぶ学生の皆さま、デザインや企画担当者の皆さまに参考にしていただけると幸いです。

Y2K(2000年代)のバッグトレンド、クリエイターズブランドブーム、キャッシュレスとスマートフォン関連アイテムなどの流れの検証、Z世代のものづくりと革鞄・バッグに対する意識の変化についても、お役立ていただけるとうれしいです。

【MEMO】

TIME & EFFORT
「革鞄・ハンドバッグ特集」

https://timeandeffort.jlia.or.jp/bag/index.html

ジャパンレザーVOICE

2023年度から「キーパーソンインタビュー」と「革製品紹介」は隔月で交互に展開しております。次回は7月19日です。「革製品紹介」では、誰かに話したくなる、教えたくなる職人技、最新スペックなど、個性が楽しいアイテムをさまざまな切り口でご紹介予定です。どうぞお楽しみに。