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ジャパンレザーVOICE:放送後記
放送後記
「ジャパンレザーVOICE(#レザボイ)」第十八回を12月20日(水)に放送いたしました。いつもご視聴いただき、ありがとうございます。
レギュラーコーナー「ジャパンレザー 旬暦」と「キーパーソンインタビュー」を隔月ごとのオンエアしておりますが、今回は「キーパーソンインタビュー」。このたび国内最大の革製品コンテスト「ジャパンレザーアワード2023」グランプリ受賞者 石橋 善彦さんにご登場いただきました。
レザーウェアブランド オベリスクのプロダクトマネージャーとして活動する石橋さん。現在ご所属の「オベリスク」さんは、「日常の贅沢」 をテーマに、皮革を中心とした特徴ある素材を使用し、アーティスティックでアルチザン的なものづくりをなさっています。
ファッション専門学校在学時、ユニフォームのコンテストにエントリーする際、高校生のときに入部していた弓道の革製の防具をモチーフにしたデザインを考案。その創作期間に、革について興味をもったという石橋さん。その後、あるショップでとても気になり、お金を貯めて買った白いレザージャケットが現在所属なさっている、オベリスクさんが手がけたアイテムだったそうです。そんな偶然が重なって、レザーのものづくりへ導かれ、入社して17年(2023年現在)経ったそうです。
ワイルドな印象のあるレザーウェアですが、石橋さんがオーダーを受ける顧客は、恰幅のいい大人世代からスリムな若い世代まで幅広く、アスリートやミュージシャンの舞台衣装を手がけることもあるとか。
激しいステージングやパフォーマンスに対応できる運動量と耐久性、機能性があり、着用したときに、体型がよりよく見えるような工夫もプラス。パターン上の操作でスタイリッシュに見えるようなテクニックを駆使して、レザーファンのニーズに応えているそうです。フィット感と可動域とのバランス、そしてアームやバックスタイルのデザインへの昇華、パターンの追求・・・どれだけの時間をかけて積み上げてこられたのだろうかと思うと頭が下がります。
このたび、ジャパンレザーアワード2023年度のグランプリを受賞。石橋さんは2016年に部門賞受賞なさっていますが、ついに栄冠を獲得しました。レザージャケットがグランプリを受賞するのは、ジャパンレザーアワードにおいて、初となる快挙です。
「身頃のヌバックレザーと袖に使われたパンチングレザーの組み合わせでも充分に機能的で美しいライダースだが、作者はそれでは不満足と、袖のパンチングを利用して刺し子やスタッズ(金属製の飾り鋲)といった工芸的、アーティスティックな技法をプラスした(モダンデザインでは満たされない世界を追求する姿勢は素晴らしい)」と長濱審査員長が高く評価なさっています。
番組内では、インタビュー中に急きょ着替えていただき、石橋さんに着用していただきました。作者ご本人は、やはりお似合い! 「ジャパンレザーアワード2023」審査会でも、審査員の皆さんが「着てみたい」と感じ、次々と袖を通して笑顔になっていました。
奥さまからデニムのリペアを頼まれたことをきっかけに、修繕する技法として興味のあった刺し子について調べるうち、刺し子と革の相性のよさに気づき、パンチング加工のレザーとのマッチングを思いついたのだそう。
パンチング加工の規則正しい穴を利用することで、刺し子・スタッズワークなどのハンドクラフトをより正確に美しく仕上げることができる、というアイデアを作品づくりに生かしたのは慧眼ですね。
お子さんのスケートボードの付き添いをなさっているなか、作品づくり(刺し子)に当てていたのだそう。お子さんを見守る、優しくあたたかな眼差しでひと針ひと針縫い進めて。家族の愛や絆が作品に反映していて、とても素敵です。
普段の業務で生産を担当することの多いため、修理のしやすさについても熟知している石橋さん。
「刺し子の糸が切れた際に刺し子を直すことができるよう、初めから修理を前提としたつくりにしました。袖のヒジ下・二の腕後ろにファスナーを配しています。より長く愛着を持って着用できるように考えました」(石橋さん)
また、袖口からちらりと覗く、裏地は敢えて「振らし(縫い付けずに浮かしておく)」に。切りっ放しのラフなニュアンスが作品の雰囲気を盛り上げ、リングや腕時計などの手もとのコーディネートも最高です!
番組内でもご紹介したカスタムオーダーについてまとめましたのでご参照ください。
国内産地でつくられたレザー(14色)をベースに、ステッチの糸は11色からセレクト可能。その組合せにより、オリジナリティを楽しんでいただけます。なお、受賞作品と同じネイビーの色合いではありませんが、今回用意されているネイビーは#650(見本参照)。かなり近い雰囲気の仕上がりとなります。
ご希望のサイズ、レザー、カラーなどをスタッフと相談していただき、完成までの期間(オーダーから約3か月の予定)と見積りなどをご確認ください。目安としてはオーダーメイド 400000円(税別)。サイズ変更の場合はパターン代が上代の+10%(税別)、トワルチェック(仮縫い)5000円(税別)などのほか、トータルの費用についてはご要望などによって変わりますので、ご確認ください。
「サイズ変更ご希望の場合、トワルと呼ばれる試作品を布帛にて作成し試着、フィット感、サイズ感を確認のうえ、オーダーご希望者様専用のパターンとして起こし、裁断、縫製作業の工程へ進みます。
身長が高い方、身体の厚みがある方向けに、サイズアップも可能。着こなしのイメージやフィット感のご希望に合わせ、パターンを調整し、ご自身の理想に近いシルエットにチューニングしていただけます。
採寸については、受賞作品展示会期中は、会場のスタッフが採寸。採寸をしない場合は、オーダーご希望者様の私服(お気に入りのサイズ感のアウター/ジャンパー、ブルゾンなど)をオベリスク アトリエ(東京・蔵前)に送付していただきます。
なお、その際の送料などについてはご確認ください。
グランプリ受賞作品はメンズですが、このデザインをベースに、ウィメンズとして、サイズダウンや、フィット感のあるパターン(バストダーツ、パネルラインの切り替え)へ変更できます。タイトな着こなしがお好みのかたにおすすめです。
奥さまが沖縄ご出身ということもあり、リタイア後は沖縄で革いじりをしたいという石橋さん。パンチング加工レザーは通気性がありますので、亜熱帯の地域にも適しているかもしれません。いつの日か、沖縄の伝統柄×刺し子で、この作品の進化系を発表していただきたいですね。
「YKKファスニングアワード」と「ジャパンレザーアワード」でファッション系コンテストのグランプリ2冠達成、おめでとうございます。石橋さんのご活躍を見て、来年度はウェアなど、レザーファッションを提案する応募作品が増えるのではないかと期待が高まります。
繊細かつスタイリッシュなデザインワークは、プラモデルやガンダムをデザインモチーフに求めることで、新しい「日本らしさ」の表現へと昇華しています。アニメーション作品からのインスピレーションは、今年度の学生部門の応募作品にも感じられ、ファッションだけでなく、カルチャー&ライフタイルとしてのジャパンレザーのクリエイティブの拡がりを感じました。
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