ブックガイド
靴企業社史・業界組合史
靴産業150年の歴史を知るには、まず業界を代表する企業や組合・団体の社史や組合史から。
地味だけど、インサイドならではの企業文化・産業文化を読み取り、感じ取ることができるはず。非売品ばかりだが、皮革産業資料館や各組合などに問い合わせれば入手もしくは閲覧できるはず。
1:靴産業百年史
佐藤榮寿編 日本靴連盟発行(1971年)
靴産業の誕生100年を記念して編纂された記念誌。下駄や草鞋しか履いたことのない人々が西洋靴づくりに挑戦した明治の初めから、戦争や西洋近代化の波にもまれつつ産業を発展させ、そして戦後の混乱期を乗り越えてきた状況を多くの資料と取材をもとにまとめ上げた労作。時代時代のポイントとなる出来事と人物を紹介が巧みで分かりやすい。
2:皮革産業沿革史 上・下巻
皮革産業沿革史編纂委員会編
東京皮革青年会発行(1989年)
上巻の発行は1959(昭和34)年、下巻は1989(平成元)年に刊行された。実に30年の歳月をかけて編上げられた皮革業界の歴史書。資料としても産業研究書としても一級の内容であり、資料収集から編集・執筆作業に当たった業界の先人に驚嘆、深い敬意を覚える。靴業界についての記述も詳しく、「靴産業百年史」と対をなす貴重な一冊。
3:皮革産業近現代史
皮革産業近現代史編纂委員会編
東京皮革青年会発行(1998年)
戦前、戦中の軍需が中心の皮革産業から、戦後の統制が撤廃となり、民需で動き出した皮革業界の歩みがまとめられている。革なくしては靴は生まれない。その皮革の歴史を知るのにはもってこいの書。なお、「皮革産業沿革史」上・下巻と本書の三部作を編集・刊行した東京皮革青年会は産業振興・人材育成を中心の活動を現在も続けており、2023年には創立100周年を迎える(五十年史は1974年発行)。
4:大塚製靴百年史
大塚製靴百年史編纂委員会編
大塚製靴発行(1974年)
創業1872(明治5)年の老舗メーカーは、自社の100年の歴史と共に、産業の発展を技術や団体運営などを含めリードしてきた。社史と同時に業界の出来事などがきめ細かく記録された700頁を超す大著が、そのことを物語る。年表・資料の丹念さに驚かされる。
5:STEPS ── 日本製靴の歩み
日本製靴社史編纂委員会編
日本製靴発行(1990年)
現リーガルコーポレーションが創業90年を記念して刊行した社史。靴産業の源流である伊勢勝の流れをくむトップ企業だけに、社史=業界史の趣が強い。図版・写真をメインに編集した紙面も洗練されており、文章も平易で読みやすい。ビジュアルな靴歴史書として書店販売・ネット配信も可能なほど。特に、巻末はメンズファッション本として読むことも出来る。
6:お客さまと共に
── 銀座ヨシノヤ九十年史
銀座ヨシノヤ九十年史編纂委員会編
銀座ヨシノヤ発行(1997年)
お客に読んでもらうことを意識してまとめた社史。当時の矢代裕三会長によるエッセイ集「ウォークモア・ビー・ヘルシー」がセットになっている。創業当時の社会世相やヨシノヤの歩みが、特に銀座の街と共に語られているのが楽しい。
7:日本の靴 ── 成り立ち・品揃え・はき心地
大塚斌編著
大塚製靴発行(1988年)
当時の大塚製靴会長、大塚斌(あきら)氏がまとめた靴の研究本。氏は東大卒の知性派、熱心な経営者であると同時に産業の歴史、製造技術、販売手法などの研究開発にも力を注いだ人。長年の集大成ともいえる論文、資料など、まさに靴学者の面目躍如の一冊。同氏はこのほかにも2冊の研究書をまとめており、そのうち一冊は「はきごこち──くらしの中の靴」(築地書館刊)として一般販売している。
8:アキレス50年史
アキレス企画・編集
アキレス発行(1997年)
創業50年の記念社史。同社は樹脂素材メーカーとして幅広い分野に事業拡大しているが、ルーツの一つがズックやゴム長などのメーカー。同社の発展と同時に戦後発展してきたゴム靴や日本独自の日常履きが暮らしの中で広がっていった様子がうかがえる。
9:LAMAC
50周年記念事業実行委員会編
東邦レマック発行(2008年)
総合靴卸のトップ企業の創業50年記念社史。戦後社会の中で、ゴム長、運動靴をはじめ庶民の日常普段履きを中心に取り扱い事業拡大し、やがて婦人靴・紳士靴中心の問屋として成長していく姿が、多彩な図版、データ、年表、新旧社員などの声で記録されている。日常履きファッション史の資料としても活用できる。
10:スタンダード靴七十年史
70周年記念行事企画委員会編
スタンダード靴発行(1994年)
スタンダード靴は今は無き紳士靴のトップメーカーの一つ。戦前戦後、一般庶民の靴の製造販売に力を注いでいた。そんな靴製造の製法解説や当時の靴小売店の様子などが写真とエピソードで紹介せれているのが興味深い。
11:ケミカルシューズ工業組合60年記念誌
日本ケミカルシューズ工業組合発行(2017年)
組合発足60年を記念して編集された靴産地・神戸のメーカー発展史。戦前からの神戸の記録、戦後間もなくの頃のゴム靴、ビニール靴、合皮・人皮の靴、そしてカジュアルな革靴の生産地として輸出産業時代、下請け生産時代、サプライチェーン時代、産地ブランド創造時代、様々な時代を乗り越えてきた姿がうかがわれる。
そのほか、こんな本も ──
子供靴の戦後史
藤田稔編著
東京子供靴協会発行(1996年)
西村勝三の生涯
西村翁伝記編纂会(東靴協会)発行(1968年)
わが半生 ── 10人集
靴商工新聞社発行(1972年)
東都製靴工業協同組合五十年史
東都製靴工業協同組合発行
(1997年)
靴団連25年小史
日本靴製造団体連合会発行
(1991年)
東京都靴卸組合五十年史
東京都靴卸組合発行(2004年)
オギツ30年のあゆみ
オギツ発行(1982年)
トークツグループ35年の歩み
トークツ発行(1990年)
アメリカ屋靴店50年史
アメリカ屋靴店発行(1977年)
靴見本市沿革史
東京靴見本市協会発行(1988年)
憶い出の春秋
菅沼操(スガヌマ)著・発行(1997年)
わが半生
長谷川三郎(トモエ商事)著・発行
30年 靴卸新時代へ
東京都靴卸協同組合発行
(1983年)
北海道くつ・はきもの業界のあゆみ
北海道靴履物新聞社発行
(1967年)
内田製靴社史
内田製靴発行(1971年)