ブックガイド

ブックガイド③ 靴と足と漫画と

靴と足と漫画と

漫画は今や日本文化を代表するポピュラーな存在。時代や社会の移り変わりを敏感に写し取り、若者を中心に世界的に愛読され、活字・映像・ネットといったメディアを横断して広がりを見せている。そんな漫画の世界に、靴はしばしばマニアックな形で登場する。靴職人の物語やディープな専門知識・用語も飛び交っている。

1:シューメイカー
1:シューメイカー

鳩山郁子著 
青林工藝社発行(2005年)

纏足靴をめぐる時空を超えたファンタジー。靴・硝子・鉱物・家具・(銀板)写真・美少年・時の移ろい──様々なものへの偏愛が、独特の耽美的な画風で描かれている。前半はイギリスの若い天才的な靴職人が極上の纏足靴を製作する物語。後半は去勢・纏足の歌手を描いた名作「カストラチュラ」の番外編で、纏足靴づくりのエピソードをまとめている。寡作の作者の靴へのこだわりは半端ない。初出:「アックス」1998~2002年発行号など。

2:この靴しりませんか?
2:この靴しりませんか?

水谷フーカ著 
白泉社発行(2016年)

たまたま行った歯医者で、靴の片方を誰かに履き間違えられてしまう。自分の靴とは全く違う可愛らしいデザインの靴の持ち主はどんな人?思いを巡らし、探し当てた女の子に惹かれる主人公。女の子と女の子の恋に、靴が重要な役割を果たしていく。シンデレラ物語がモチーフの現代“百合“物語はどこか切ない。初出:「つぼみ」1~6号など。

3:小路花唄
3:小路花唄

麻生みこと著 
講談社発行(2016年)

オーダーメイドの靴工房を営む三十路の女職人のひたむきな生き方と恋の物語。京都の職人長屋が舞台の恋愛連作「路地恋花」のスピンオフ作品で、靴の自作工房ヒロ、メゾンMIHARAYASUHIROなど靴のプロへの取材・協力を得て、物語が進むに従い自然と靴の知識、手作り靴の製作工程や道具についての理解が深まる構成にもなっている。19年末に全4巻が完結した。初出:「good!アフタヌーン」2016~19年発行号。

4:クレマチカ靴店
4:クレマチカ靴店

酒井まゆ著 
集英社発行(2011年)

“どんな願いでも叶う靴”を作ってくれる魔法の靴屋のお話。夢見る事をやめられる靴、絶対に捕まらない靴、一歩踏み出す勇気が出る靴、妹がいなくなる靴──さまざまな願いが込められた靴が導くのは、輝く未来か、絶望の暗闇か。靴の持つ呪術性をレディースコミックの世界に花開かせた極上のファンタジー。初出:「りぼんファンタジー増刊号」「ジャンプスクエア」2009~11年発行号。

5:IPPO(イッポ)
5:IPPO(イッポ)

えすとえむ著 
集英社発行(2012年)

イタリアの名門靴メーカーで修行し、東京でビスポーク靴工房を営む若き靴職人の成長物語。いい靴とは何か、いい靴職人とは何か、を追求して真摯に靴づくりに向き合う主人公に共感する読者の中にはリアル靴職人も多いとか。靴とは、歩きやすいものであるべきだ、美しくあるべきだ、新しい1歩を踏み出すためのものだ。そんな世界観が端正な筆致で描かれる全5巻の力作。初出:「ガールズジャンプ」「ジャンプ改」2012~2017年発行号など。

6:靴理人(シューリニン)
6:靴理人(シューリニン)

尾々根正+大鳥居明楽著 
芳文社発行(2014年)

お客が持ってきた靴を“スキャン”、熟視観察することで靴の問題点=持ち主の履き癖などを見抜き、その改善・補修を行う凄腕の修理職人兼シューフィッタ―が主人公。靴は人なり、人生・生き方を写す鏡なり、と、靴を修理することで持ち主の人生の問題まで解決してしまうが、自分の夢や恋はなかなか実らない。全3巻。初出:「週刊漫画TIMES」2014~15年発行号。作者コンビの靴シリーズ第2弾「靴cream」はkindle版で発売中。

7:つまさきおとしと私
7:つまさきおとしと私

ツナミノユウ著 
講談社発行(2015年)

靴の余った爪先を切り落とす妖怪・つまさきおとし。その意味も目的もない行為を目視できる唯一の人間である13歳の少女との不可思議な”ガール・ミーツ・妖怪”物語。そして靴モチーフ物としては珍しいギャグ漫画。1、2巻合計108人の靴の爪先を切りまくりつつ展開する妖怪と少女のラブコメの初出はニュースサイト「ねとらぽ」連載の話題作。

8:新しい足で駆け抜けろ。
8:新しい足で駆け抜けろ。

みどりわたる著 
小学館発行(2020年)

漫画の時代並走速度はとてつもなく早い。令和の青春スポ魂マンガの主人公は、事故で脚を失った高校生。義肢装具士と出会い、競技用の義足を得て、パラスポーツの世界に飛び込んでいく。強力なライバルに立ち向かい、東京パラリンピックを目指し、新型コロナウイルスの流行に翻弄され、葛藤・苦悩する。物語は現実と同時進行形で展開していて、単行本は立て続けに3巻まで刊行され、「ビッグコミックスピリッツ」の連載も好調だ。

9:赤のテアトル
9:赤のテアトル

緒川千世著 
祥伝社発行(2017年)

巨大化グローバル化するパリのファッション界で急成長し、注目を集める靴ブランド企業の青年社長(女装のミューズであり花形デザイナー)とゴーストデザイナーのめくるめく愛憎と主従逆転のピカレスクロマン。そして、アンデルセンの「赤いくつ」をモチーフにしたエロティックなBL(ボーイズラブ)漫画でもある。ストーリー展開、画とレイアウトなども楽しめる。初出:「on BLUE」23~27号。

10:ゲソコン探偵
10:ゲソコン探偵

花林ソラ作・百井一途画 
講談社(2019年)

身長も、職業も、犯罪トリックも、足跡を見ればすべてがわかる――捜査一課の新米女刑事と足フェチのシューフィッタ―靴屋がコンビを組み数々の難事件を、靴と足と足跡から解決していく”バディ・ミステリ”。原作者が練りに練ったプロットやトリックは、一見荒唐無稽で漫画チックだが、読み進めるうちに、どんでん返しの魅力あふれるミステリの世界に導いてくれる。初出:「別冊少年マガジン」2018~19年発行号。

11:0時5分のシンデレラ
11:0時5分のシンデレラ

藤井みつる著 
集英社発行(2014年)

12時の鐘が鳴ると魔法が解けてしまうガラスの靴。でも、今を生きるシンデレラたちにとって、0時5分から始まる現実を共に歩んでくれる靴こそが大切。おしゃれで素敵な靴を売るよりも、その靴を履くことから始まる日々が幸せで、歩く喜び、楽しい思い出が生まれることが大切。と、ひたむきに注文靴づくりを行う製造小売店のお話。靴選びに悩む作者の願いが込められた作品。初出:「officeYOU」2013~14年発行号。

12:ルクレル靴工房
12:ルクレル靴工房

山本修世著 
白泉社発行(2015年)

深夜のみ営業している街角の靴屋と、お店に訪れるお客の恋・家庭・仕事などの悩みが交錯する物語。口は悪いけど腕は超一流の店主が、靴づくり、靴直しを通じてココロのお直しも果たしてしまう。靴は幸せを招く器、そんな古来からの言い伝えを、靴にはまったく無知無関心だった作者が、締切りに追い詰められて生み出した作品で思いもよらず具現化。やはり靴には呪術性がある? 初出:「別冊花とゆめ」2012~15年発行号。

13:シンデレラの靴、あります。
13:シンデレラの靴、あります。

藤井明美著 
集英社発行(2014年)

会社をクビになった駄目OLが、ちょっとしたアクシデントがもとで知り合った凄腕シューフィッタ―が勤める靴店の販売員に。久々の販売女子の成長物語(2000年以前の靴漫画では割に多かった)登場かと期待したが、シューフィッタ―への恋心の高まりと反比例して、販売員としてのレベルアップを果たせぬままに最終章(全3巻)に。初出:「YOU」2013~15年発行号。

14:恋のつま先
14:恋のつま先

青山十三著 
親書館発行(2011年)

BLコミックの人気シリーズ「恋する靴屋シリーズ」の第1巻。オーダーメイドも行う高級靴専門店の販売員や職人、来店するお客、様々なカップルの恋愛模様を“愛と幸せのお守り”である靴にからめて軽やかに描いていく。シリーズは「恋の靴音」「恋の誘惑」「恋の行き先」と4巻まで続く。初出:「Ⅾear+」2010~15年発行号。4巻はkindle版。

そのほか、こんな本も ──
金の靴 銀の魚

金の靴 銀の魚

河井克夫作・市川ラク画 
エンターブレイン発行(2011年)
女靴職人の淡い恋心と足の汚れを食べる魚の成長を共鳴させた奇妙な味の物語

裸足で、空を掴むように

裸足で、空を掴むように

梅田阿比著 
秋田書店発行(2017年)
魔炎憑き(魔女狩り)の時代、靴職人の娘が想いを込めて製作した靴が奇跡を生む

赤い靴はいた

赤い靴はいた

あおきてつお著 
草土文化発行(1995年)
戦時下、父親が必死で手に入れた赤い靴を、娘は履くこともなく原爆の犠牲に

言の葉の庭

言の葉の庭

新海誠作・本橋翠画 
講談社発行(2013年)
アニメーション⇒ノベライズ⇒漫画、多メディアで表現された若き靴職人の恋物語

あしあと探偵

あしあと探偵

園田ゆり著 
講談社発行(2017年)
風変わりな優男の探偵は「あしあと」から「人探し」を行う凄腕のプロだった

三寸金蓮

三寸金蓮

月森雅子著 
ぶんか社発行(2010年)
可愛らしい靴に秘められた究極のフェティッシュ、纏足にまつわる連作ホラー

ヴィーナスの靴

ヴィーナスの靴

雨宮淳著 
少年画報社(1998年)
東京・浅草の自称名人靴職人のちょっとエッチなハイヒール製作話。全5巻の人気作

ローファー・ローファー

ローファー・ローファー

吉田まゆみ著 
集英社発行(1995年)
今を生きる女の子の恋のテキストブック、90年代版。多彩なケーススタディの全4巻

トウ・シューズ

トウ・シューズ

水沢めぐみ著 
集英社発行(1997年)
目指せ、プリマ。夢と友情のバレリーナ物語。どこか懐かしいタッチ。全5巻

ハイヒール行進曲

ハイヒール行進曲

高田タミ著 
集英社発行(1998年)
靴デザイナーになりたい!と、有名靴店で販売員として頑張る女の子の成長物語

サヴィル・ロウの誘惑

サヴィル・ロウの誘惑

イノセ著 
東京漫画社発行(2017年)
紳士服と紳士靴の若き職人たちが織り成すテーラーメイド・ラブストーリー

恋を履かせる最高の条件

恋を履かせる最高の条件

るんぁ著 
竹書房発行(2016年)
高級婦人靴専門店の店長が出会った理想の足の持ち主は、アルバイト男子だった!

君の足にキスさせて?

君の足にキスさせて?

秋月ルコ著 
徳間書房発行(2017年)
足フェチの先輩と婦人靴モデルをしている男子高校生のフェティッシュな愛

俺の姫靴を履いてくれ

俺の姫靴を履いてくれ

須河篤志著 
KADOKAWA発行(2015年)
足フェチ靴職人とワケあり女子高生のどこか奇妙な婦人靴製作&ラブコメディ

君に恋するハイヒール

君に恋するハイヒール

塩田りょう作・斎藤あたる画 
ふゅーじょんぷろだくと発行(2015年)
女装が趣味のまじめな店長さんとヤンキーなバイト君のハートフルなラブコメ?

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