ブックガイド
テキスト・アラカルト
靴は二足歩行を支え、知恵の象徴とされ、文化を形成する原点ともいわれる。そこで、靴をより良く、より深く知るためには多様な角度からのアプローチが必要となる。テキストブックも実に多様だ。
1:プロフェッショナル・シューフィッテイング
ウイリアム・A・ロッシ、ロス・テナント著、熊谷温生訳、
リーガルコーポレーション発行
アメリカ靴産業、足医学の権威が著した足と靴と歩行の綜合的な教則本。靴の構造や製法、素材・パーツの知識、足の構造や歩行のメカニズムなど、シューフィッタ―はもちろん靴づくり、靴販売、すべての靴関係者にとっての必須知識がイラストや写真と共に解説されている。この本以後、靴合わせに対する意識・技術・理解が大きく変わっていった。
2:足と靴──その整形外科的処置法
レネ・バウムガルトナー、ハルトムト・シュティネス編著、
赤城家康監、
フスウントシュー・インスティテュート発行
ドイツの整形外科靴に関する専門書の翻訳。足の整形外科医や整形外科靴マイスターの研究論文、処方実例などをまとめたもので、理論から実践までを解説している。整形外科靴の知識・技術を教える専門学校の創立10周年を記念して出版され、その後も新たな研究成果や知識を盛り込んだ改訂版が出されている。
3:靴の商品知識
エフワークス発行
靴小売店の販売員、問屋の営業マン、メーカーの職人、靴業界企業に就職するとほぼ間違いなく読むことになる入門書。靴の種類、製法知識、革やパーツの知識、シューズファッションの変遷など多彩で、1965年に初版が発行され、時代と業界の変遷と共に改訂、内容充実しつつ版を重ね今日に至っているロングセラー。
4:百靴事典
大谷知子著、シューフィル発行
”靴好きのための靴用語集”として2004年に発行された事典。マニアックな視点で取り上げられた用語一つ一つにイラストや写真が添えられ、解説文も時にユーモラス、時に厳しい評論調だったりオモシロい(内容は正確だが)。日本の靴産業150年を記念して、改訂新版が発行される予定という。楽しみだ。
5:製靴書
山口千尋監修、誠文堂新光社発行
ビスポーク・シューメイキングの分野を切り拓いてきた第一人者、山口千尋の靴職人としての哲学、足と靴と製靴技術に関する豊富な知識がほとばしるビジュアルブック。靴の歴史からビスポーク靴の製造工程、道具の解説など、豊富な写真と共に語られ、その写真の撮り方にも工夫とこだわりが感じられる”山口流の秘伝書”だ。
6:紳士靴を仕立てる
三澤則行監修、スタジオタッククリエイティブ発行
ハンドソウン・ウエルテッド製法による紳士靴(オックスフォードとダービー)2種の作り方を2200枚の写真に克明に写し取り、各工程・作業に解説を加えた”見て学ぶ靴づくりテキスト”。国内外の技術コンテストで受章し、靴アートの作家としても国際的に評価される三澤則行の丹念な仕事ぶりも堪能できる一冊だ。
7:ニッポン靴物語
山川暁著、新潮社発行
日本の近代化の歴史を靴(西洋靴)の登場と靴産業の発展になぞらえて、数々のエピソードと共に辿っていく”物語・靴産業史”であり、軍国ニッポンの盛衰史であり、庶民生活の中に靴が取り入れられていく生活史にもなっている。数多くの産業資料や書籍、一般の歴史書や小説などを取り混ぜたエンターテインメント性も豊か。
8:西洋靴事始め
稲川實著、現代書館発行
皮革産業資料館の副館長であり、産業史の研究家でもある稲川實が東京都立皮革技術センターの機関誌「かわとはきもの」に長年連載してきた「靴の歴史散歩」を再録・編集した一冊。庶民と靴の出会い、産業初期の先人の活躍と苦難などを豊富な資料を基に、楽しく、哀惜を持って書いている好著である。
9:シューズA―Z
ジョナサン・ウォルフォート著、武田裕子訳、
ガイアブックス発行
シャルル・ジョルダン、モード・フリゾン、ロジェ・ヴィヴィエ、セルジオ・ロッシ、マノロブラニク、カンペール、チエ・ミハラ、トキオ・クマガイ──1950年以降、主にヨーロッパやアメリカで活躍したデザイナー、ブランド約350のガイド&エピソード集。商品写真、ファッション画、広告ヴィジュアルなども多彩に紹介されている。
10:Shoes シューズ
ジョン・ピーコック著、徳井淑子監修、小山直子訳、
マール社発行
紀元前2500年の古代エジプトから2000年の現代までのシューズファッションの変遷を約800点のカラーイラストでまとめた靴のデザイン史。紀元前、17世紀まで、18~19世紀、20世紀前半、20世紀半ば・60年代まで、1970~2000年の6章に分かれ多様な靴の紹介とそれぞれの時代のファッション解説が加えられている。
11:靴のラビリンス
INAX出版発行
靴の文化誌的考察を集めたカルチャーブック。「フェティッシユの黄昏」山田登世子、「はきもの人類学」近藤四郎、「中世靴物語」阿部謹也、「モカシンからハイヒールへ」市田京子、「日本のはきもの」潮田鉄雄、「靴をはいたニッポン人」山川暁、そしてヨーロッパ中世の靴や世界の民族靴の写真など、ため息が出る内容。
12:FOOTWORK 足の生態学
鈴木忠志、磯崎新、高橋康也、山口昌男著、
PARCO出版発行
演出家、建築家、英文学者、文化人類学者、それぞれの分野のプロフェッショナルが、足をテーマに縦横無尽に論じ、語り合う貴重な一冊。足から見た世界、足の不思議、足と生活・演劇・舞踏、そして靴履物との関係。ギリシャのサンダル、アイヌのシャケ革の靴、地下足袋や下駄の話──足の発見から靴は始まる。
その他、こんな本も ──
紳士靴完全バイブル
上田哲司監修、ナツメ社発行
靴職人が解説する靴の知識、歴史、サイズ計測、素材・パーツ、手入れ、修理まで
紳士靴を嗜む
飯野高広著、朝日新聞出版発行
紳士靴の商品知識から選び方、コーディネート、手入れ方法まで微に入り細を穿つ一冊
靴を読む
山田純貴著、世界文化社
本格派の紳士靴に関するトリビアを豊富な知識と経験をもとに紹介するマニア本
理学療法士のための足と靴のみかた
坂口顕編、文光堂発行
リハビリテーションの専門家がまとめた足の障害に合わせた靴の見立て方ガイド
手縫いで作るサンダルとスリッパ
スタジオタッククリエイティブ発行
初心者向けの革工芸シリーズの一冊。手作り靴製作者がつくり方を手ほどきしている
手作り革靴の本
誠文堂新光社発行
各地で活躍する手作り靴製作者を紹介しつつ、靴の作り方や手入れ方法などを簡単ガイド
いちばん詳しい靴ひもの結び方
シューレーシング取材班編、実業之日本社発行
スニーカー、ブーツ、登山靴、一般の紳士靴などの紐結びだけに絞ったユニーク本
Shoes&Foot
五十嵐佳子著、エクスナレッジ発行
ハイヒールの商品知識、選び方、楽しみ方、足の健康についてをやさしく解説
足もとのおしゃれとケア
Comodo編集部編、技術評論社
シンプルライフを楽しむ人のための靴選び、コーディネート、足の健康と手入れ本
ダンサーズ・フットブック
テリー・L・スピルケン著、小川正三監修、安井慎一訳、
大修館書店発行
ダンサーのためのフットケアガイド、そして靴選び、フィッテイングを解説
足と靴700
人体パーツ素材集制作部編、廣済堂出版発行
足のポーズ、様々な靴のイラストの素材データ、描き方ポイントを紹介する
身近なもののはじまり──
くつ
市田京子監修、野中祐著、PHP研究所発行
子供向けの商品紹介シリーズの1巻。いろいろな靴履物の起源や由来を紹介