シューワード玉手箱
ハイヒールの迷宮
ハイヒール──十六世紀、西欧で起こり、マレーネ・デイトリッヒの時代に全女性を魅了した地上五インチの快楽。
ハイヒールは女性とともに歴史を歩んだ靴とばかり思っていたら、大間違いだった。あの、ルイ十四世がハイヒールを履いていた。──17世紀ごろ、美に力を注ぐ王侯貴族たちに、性別を問わず愛されたのがハイヒールだったのだ。
婦人靴のヒールの高さのうち、ローヒールと呼ばれるのは3センチ以下で、一番歩くのに適した高さです。3.5センチ位から6.5センチ位までが中ヒールと呼ばれるもの。7センチ以上がハイヒールです。
上等ってのはね、ハイヒールを履いても痛くならない足を持つことを言うのよ。それとね、足を痛めないハイヒールを買えるってことよ。
ハイヒールというのは、美しい人のために存在している唯一の靴かもしれない。だから、履く人も覚悟がいると思うね。
ハイヒールをはくと、自然と背筋がのびシャンとします。長時間はいていると体によくないとか、外反母趾になるとか言われますが、時にはシンデレラのように、きゃしゃな靴もはいてみたいのです。
ハイヒールは形状においても考え抜かれたエロティックなデザインを示す。爪先から踵にかけてのソールが表す「斜め」のライン──これにより足底は地表より斜め上方にリフトアップされるのだが、これはハイヒールを履いた女性の大地=母性からの離脱を意味する。
ハイヒールにすると姿勢がよくなるばかりではなく、女としての義務感に目ざめるという。──さて、ハイヒールを常用するようになって、私のバッグは急に大きくなってしまった。つらくなった時に、いつでもはきかえができるように、フラットの布の靴を持ち歩いているからだ。
人が進化の過程で、立ち上がり、二つの足で歩み(二足直立歩行)始めた時、四足で歩く同物に比べて、身体の各部が、解剖的、生理的に、自然に反する無理な形態に変わった。──ハイヒールをはいて、立ち、歩くことは、はだし以上に、身体の各部を、自然に反する無理な形態に変えることになる。
女性にとってハイヒールは、ダイヤモンドよりも“ベストフレンド”と言えるでしょう。
ハイヒールは脚を魅力的に飾るだけでなく、容姿も美しく見せてくれる。そんなヒール以上の役割を果たすものは、まだ発見・発明されていない。
ハイヒールはやがて、コスプレ・グッズか、舞妓さんのポックリのような伝統文化財になるでしょう。
この身体は8月9日の原爆による放射線・爆風、熱線に曝され──右足は変形しているため、足の裏全部が地面につきません。──私は、今でもハイヒールをはいて、さっそうと歩く夢を何度か見ます。そして、夢から覚めると現実の姿にみじめになり、辛さと悔しさに、原爆を心から憎みます。
東京・杉並にハイヒールを履くための足づくりや正しい歩き方、姿勢を学ぶことができるスタジオがある。百歳までハイヒールを履く女性を目指す、その名も「100歳ハイヒールレッスン」だ。──40代を中心に20歳から80代までの美意識の高い女性が通う。最高齢は84歳──いまでも美容関連の仕事に携わり、仕事の時は必ずハイヒールを履くという。
このガラスの靴、履けるんです。──プロポーズや結婚式のサプライズ用に“シンデレラの靴”を求める声に、東京・中野のガラス職人が1千回以上の試作を重ね完成したガラスの靴が人気だ。「ハイヒールのシャープさを出しつつ、履ける形にしていくのが難しかった」
私はいつか女性が仕事でヒールやパンプスを履かなきゃいけないという風習をなくしたいと思ってるの。なんで足怪我しながら仕事しなきゃいけないんだろう、男の人はぺたんこぐつなのに。
ピンヒールを履いた瞬間、人は“女”になるのです。
私はヒールを愛している。常にシンプルで新しいヒールのフォルムを追求している。ヒールはセクシーで力強く、光り輝いていなければならない。なぜなら、ヒールが非日常的な世界に持ち上げてくれるから。だから、私のヒールは、他のデザイナーのヒールとは違うのだ。
靴にとって大切なのは、シルエットとヒールだ。なぜなら、そこに造形としての美を生み出すポイントがあるからだ。