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「靴産業創設150年記念イベント第二弾」レポート
日本における靴産業創設150年を記念するイベント第二弾が2020年11月23日から12月7日、東京・浅草 浅草文化観光センター7F 展示ホールで行われました。「三澤則行 作品展 未来に跳ぶ靴」(11月23日~29日)、「マニアックツ・ギャラリー/靴のヴィジュアルペーパー展」(12月1日~7日)で構成。
「今回は8~10月に開催された<歴史紹介イベント>に続く、靴をテーマとしたアート、デザイン、文芸にスポットを当てた<文化イベント>です。靴の持つ多様性、人と暮らしに感性面からも与えている影響の一端を紹介し、靴の文化性や精神性についてアピールしました」と主催・プロデュースを手がけるクツミライ・パートナーズ 城 一生さん。
「三澤則行 作品展 未来に跳ぶ靴」からスタート。三澤さんは国内外で高く評価される靴職人。2010年 International Efficiency Contest of Shoemakers (ドイツ国際靴職人技能コンテスト)、金メダル、名誉賞、の両賞受賞。「Japan Leather Award 2013」プロフェッショナル 生活雑貨部門賞受賞。2015年 第33回 日本革工芸展「文部科学大臣賞」受賞ほか受賞歴多数。
そのフィールドは多岐にわたり、宮内庁に納品(2019年 伊勢神宮「親謁の儀」)後、2020年 天皇皇后両陛下より「御紋付銀手釦」を賜りました。スパイク・リーなどの世界的映画監督、俳優からオーダー靴を受注。カンヌ、 ニューヨーク、ロンドン、ベルリン・・・世界各地で作品を発表するほか、世界的アート団体からもアーティストとして認められています。
靴とアートをボーダレスに行き来するような自由で唯一無二の世界観を構築。デザイン性、オリジナリティもさることながら、見る角度や時間帯、自然光・照明の状態で表情が多彩に変化するのも素敵です。
三澤さん自身の作品に加え、主宰する靴教室(THE SHOEMAKER'S CLASS)の門下生である、若手作家(職人)の作品も展示。岩崎和佳さん、岩淵元子さん、斎藤瑞貴さん、山口登さん、吉新俊輔さんの5人が出品。フレッシュな感性とメッセージ性が感じられ、作品に向き合うなか感情の揺れ動くひとときが楽しい。
同じく、THE SHOEMAKER'S CLASS 講師 川﨑功大さん、今 友貴絵さんも出品。それぞれの作品が、既成概念を打ち破る、美しさ。身体との関係性だけでない、精神的なアプローチと際立つ存在感で、靴とはなにか? 問いかけてくるようでした。
続いて行われた「マニアックツ・ギャラリー/靴のヴィジュアルペーパー展」。靴の街・革の街、浅草の靴企業のカタログ・パンフレットや、靴映画のパンフレットやフライヤー(チラシ)、靴に関する雑誌、媒体、平成時代に盛り上がったシューズクリエイターたちが趣向を凝らしたDMなどなど、紙もの資料の貴重なアーカイブは圧倒的な数量。日本の靴の歴史を雄弁に語ります。
会期終盤にはトークライブ「朗読会・喜佐の靴物語/シューズデザイナー 高田喜佐のエッセイを読む・聞く・話す」を開催。靴デザイナーとして1970年~80年代のシューズファッションとブランドブームをリードした高田喜佐さんのエッセイ集の"朗読会"というこれまでにない試み。
「日本で初めてのシューズデザイナーとして時代を切り拓き、多くの人に愛された高田喜佐さん(1941~2006)はエッセイストとしても活躍し、10冊のエッセイ集を著しました。
おしゃれで、明るく、みずみずしい文章世界。うぶで、おきゃんで、ひたむきな人柄。そんな高田喜佐が信じた〝靴の力〟〝言葉の力〟を、今、新たな一歩に踏み迷う<令和の靴人たち>に届けました。
朗読をしてくれたのは矢代朝子さん。舞台女優であり、さまざまな朗読会を主宰・出演しているプロフェッショナルです。そして、取材・編集者として高田喜佐と交流が深かった大谷知子さんもトークゲストとして参加してくれました。
詩や戯曲、文学作品の朗読会は静かなブーム。各地各所で開かれています。言葉の力と美しさに触れ、感性と想像力を刺激する。そんな魅力があるようです。高田喜佐のエッセイという”言葉の宝庫”に触れる幸せを味わってくれました」(城さん)
矢代さんの朗読によって、丁寧に紡がれた高田喜佐さんのまっすぐな想い、シンプルな表現。
「靴っておもしろい。そして、とても大切。若い頃の私は、靴をおしゃれの主役にしたいと考えていた。靴の存在価値を高め、自己主張をさせたかった。それが、月日がたち、いつの頃からか靴は脇役と考えるようになった。それも、名脇役でありたいと」(高田喜佐「太陽と靴と風と」より)。
「三澤則行 作品展 未来に跳ぶ靴」より
150周年の節目、大きな時代の変わり目に生きる私たちの胸にそっと響きます。イベント終了後は業界関係者と若手クリエイターの交流も活発。日本の靴文化を次の10年、100年へとバトンを渡すようなエネルギーに満ちていました。
「今後の靴づくりはどう変わっていくのか。昭和時代に繁栄成長した<靴の浅草>、平成時代に話題を集めた<靴教室や個人製作者>はどんな戦略を思い描き、レーゾンデートルを示していくのか。そんな興味と、靴業界を静かに支えてきた人への愛惜。人と人をつなぐのは、人と人を人がつなぐのがいちばんと信じ、リアルイベントを行いました。
楽しく、興味深く、示唆に富み、明日につながる何かを得ていただければ。今後も多彩な企画を準備しておりますので、ご期待ください」(城さん)
ウィズコロナ時代、ステイホーム時代の靴とは? 日本の150年の歴史をひも解き、希望を灯すような視点を提示。オンラインイベントが普及しているからこそ、リアルな空間での体験がとても貴重。来場者おひとりおひとりの特別な記憶として刻まれました。
2021年も引き続き日本の靴、日本の革関連のイベントをお知らせしていきますので、どうぞお楽しみになさってください。