Column

革の基礎知識 Basic knowledge of Leather

革の基礎知識

皮から革へ

皮がどのように製品に使われ、その特長をどう活かしているかは案外見えやすい。しかし、その原点である“なめし”の現場では、いったいどのような工程が行われているのだろう?

1そもそも……なめしってなに?

ジャパンレザーのものづくり、そのスタート地点となるのがなめしだ。
“傑作”プロダクツはここから生まれる。

タイコ

▲ 「なめしの現場」と聞いて革好きなら真っ先にイメージするのが中でなめしが行われるこの「タイコ」だ。

「革が化ける」と書いて、靴。「革で包む」と書いて、鞄。では「革を柔らかく」と書いて?
答えは鞣(なめし)。それまで「皮膚」であった皮を道具として使えるように「革」へと生まれかわらせる、魔法のような技術だ。
実はこのなめしは、国内でも盛んに行われている。革というと、どうしてもイタリアやアメリカが原産国と思われてしまいがちだが、それは原皮の原産国イメージが強いため。ほぼ国産である豚や一部の牛などを除き、輸入した原皮から毛や汚れを落とし、字のごとく柔らかくしなやかに、なめしていく技を持つ人たちがここ日本にも数多く存在する。それがタンナーと呼ばれる人たちだ。
その集積地であるのが、姫路、関東では浅草界隈にあたる。この2カ所に共通している特徴は、川。なめしにはいくつか方法があるが、その工程では大量の水が必要であり、タンナーは水源が豊かな場所に集まっていることに由来する。ちなみに、ニッポンのなめしと海外のなめしの違いはひとつに、この水質、軟水と硬水の違いも影響しているといわれている。そして、もうひとつ違いをあげるとしたら、なめし剤。

具体的になめしとは、そのままでは腐敗したり、水分が抜け硬くなってしまう「皮」のコラーゲン繊維になめし剤を結合させ、安定した素材「革」に変化させること。そうすることで、劣化を抑えながら、素材としての柔らかさや強度が生まれる。現在、このなめし剤は、植物由来成分である「タンニン」と、塩基性硫酸「クロム」が主流となっているが、古くは燻したり、塩や油を使った方法もあった(一部ではこれら伝統技法が再評価され復活している手法もあるという)。ここでもニッポンと海外で、使用できるなめし剤に使われる薬品の違いがあるのだが、このなめし剤の調合こそが、タンナーそれぞれのオリジナリティとなり、特徴となる。

なめされた革は、その後にタンナーもしくは専門業者によってさまざまな加工、色づけが行われ、卸業者などを通じて、ようやくと各工房へと渡ってゆく。

最近では、このなめしが注目され、デザイナーや販売店なども一級品を求め直接タンナーとやりとりするケースや、タンナー自らが企画し、製品を生み出すケースもでてきているので、今後、その動きには注目してもらいたい。新たなレザープロダクツの誕生は、もうすでに始まっているかもしれないのだ。