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1000年以上の歴史がある日本の革文化
日本の革の歴史は、飛鳥時代以前に大陸から渡来した人々によって、革の加工技術の多くが伝えられたとされている。ここでは、歴史とその地域の特性を紹介していく。
なめしの技術が古くより伝わる地
革に関する歴史は古く、その加工は奈良時代以前より行われていた。特に姫路のなめし技術は有名で、今もなおその技術と職人魂が伝えられている。なめし事業所数も群を抜いており、成牛革の生産量2位である東京の3倍近い。大きな川が流れ、海が近くにある姫路は、地勢そのものも革の加工に適しているのだ。また、その美しさと強度から、甲冑や武具、馬具や太鼓にいたるまで広く使われ、非常に価値が高いものとして用いられてきた「白なめし」も姫路を代表する皮革のひとつだ。最近までその伝承が危ぶまれていたが、技術の保存に尽力する動きが少しずつだがあらわれてきている。そして、同じく兵庫県にあるのは、鞄の街・豊岡。なんと、日本産の鞄の7割が作られているという。柳行李の製造が起源で、ここも1000年以上の歴史を誇っている。日本で唯一の「鞄団地」があるのも有名だ。
日本刀の代表的な産地ならではの発展
良質の鋼が取れ、日本刀の産地で知られる山陰・山陽地方。刀の柄や鞆は鮫皮で装飾される。ここで勘違いしやすいのが「鮫」。日本の刀の装飾に使われていた鮫皮とは「エイ」のことである。現在では財布など小物にも使われるようになったこの「エイ」、実は日本の近海産ではなく、南シナ海やインド洋でとれたものが輸入されて使われていた。硬く丸や楕円の文様が特徴のエイ革は、日本刀の美しさにピッタリ。
日本を代表する手袋の産地
日本で作られる革手袋の90%以上が作られている東かがわ市がある四国地方。野球やゴルフをはじめとする一流のスポーツ選手が使用するグローブも、ここで作られた製品が多いという。なぜここまで皮革産業が盛んなのか。そのひとつの理由は土地の特性にあるという。温暖で、雨が少なく、川が多いというこの地域の気候や地勢は、革の加工に適している。世界に誇る、日本の技術がここにある。
女性用履物と馬の産地
九州は日本開史以来、諸外国の玄関口となってきた。中世〜近世にかけては中国よりの文明の伝来。近世に入れば西洋各国からそれまでになかったような新技術が続々と流入してきた。そして渡来人によって革の製法が「上陸」したのは、まさにこの地であった。古くよりその中心となった地である、北九州市は現代では女性用の履物の生産で知られる。また、熊本県は日本有数の馬の産地として名高い。気候が温暖で、革の原料となる畜産も盛んだ。