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世界の革産地を巡る旅
人間の暮らしと密着している牛、馬、羊、豚が代表的だが、他にも革は無数の種類がある。ここでは世界中にある革とその国に伝わる技術の特徴を紹介しよう。
牛革そのもの、原皮の生産地
革は食用として用いられた後の「二次的産業品」である。牛肉を大量に消費するアメリカは、その消費にあわせて必然的になめしの技術が発展してきた。それだけではなく、革の原料となる「原皮」の産地でもあり、日本をはじめ多くの国に輸出している。先住民の革の文化も注目すべきで、美しい工芸品なども残る。
ワニなどの爬虫類が有名
キューバには美しいワニが多数生息している。その皮革を巡って、動物保護のためのワシントン条約が締結する以前は、乱獲がおこなわれてしまっていた。そのため、国の名前が冠された「キューバワニ」が絶滅の危機に瀕しているという悲しい現実もあるが、ワニ以外でもアナコンダやニシキヘビなどのスネーク類の産地でもある。
多彩な爬虫類の宝庫ともいえる国
ワニ、スネーク類、トカゲなど多種多様の爬虫類が生息しているインドネシア。「ダイアモンドパイソン」と呼ばれる美しいニシキヘビ、「リングマークトカゲ」と珍重される最高級品などもインドネシア産が多い。より高品質なエキゾチックレザー、野生よりもきれいな状態で出荷できる養殖も盛んに行われている。
薬品科学工業が発展している
薬品化学工業が発展している先進国といえば、ドイツ。革の加工には多くの薬品が使われるのは知られるところ。ドイツはその研究が進んでいる国なのだ。牛肉や豚肉を消費する食文化で、その副産物である皮革をなめす技術や染色技術が文化として発展してきた。世界的な服飾ブランドもあり、装飾品としても注目されている。
エキゾチックレザーの宝庫的な地域
ワニ、ヘビ、トカゲ、オーストリッチ、エレファントなど無数の種類のエキゾチックレザーの産地、アフリカ。他の産地とはまったく違う魅力がある。サイズが大きく利用価値が高いナイルオオトカゲ、ナイルワニ、7〜8mの体長でも知られるアフリカニシキヘビなども有名だ。産地によって日本に輸入できないものもある。
革の彩色、装飾技法は歴史的にも有名
柔らかく絶妙な発色で知られるイタリアレザー。古くからタンニンなめしがおこなわれ、染色の技術も同時に発展してきた歴史が生み出した逸品。ルネッサンス期には、完璧な美しさを誇る装飾の技法(打ち出し、打印、彩色など)が確立され、本や刀にとどまらず、インテリアなどにも積極的に革が用いられてきた。
完璧な技法で世界の女王に君臨
革製品を取り扱う、世界的にも有名なブランドの本拠地があるフランス。自然、上質な革の多くがこの国に集ってくる。中世以降多くの戦いを経てきており、馬具や馬車の道具、武器などを製造する確かな技術を継承し応用してきた歴史もある。また、エレガントなレザーが好まれるお国柄で、そのニーズに応える有名タンナーも多数。
伝統的な技法を守る文化の国
鞍をはじめとする馬具、そして知識を伝える書物に革が用いられてきた。用途に応じて堅牢だったり、しなやかだったり……。いずれにせよ丈夫で長持ちする革を生産することでも知られており、現代も伝統的な技術で革が生産されている。門外不出の技術で知られるタンナーも多い。また紳士靴の分野では世界的な名ブランドも多い。