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靴に合わせるのではなく、足に合わせる靴選び
靴選びにおいて試し履きは欠かせない儀式だ。
相性のいい相棒として末永く付き合うための、留意すべきポイントを解説しよう。
足の構造
足は一対で全体の4分の1に当たる52の骨がある。さらに64の筋肉と腱、76の関節、214の靭帯から成り立っている。これらが複雑に絡み合うことで直立歩行を可能にしているのだ。
歩行運動には血液を循環させるという役割がある。血液は心臓のポンプ作用により全身に送られるが、最も遠いところに位置する足に到達するころにはいささか減速する。チャージの役割を担うのが、筋肉を伸縮させる歩行。足が「第二の心臓」といわれる所以である。レオナルド・ダ・ヴィンチが人間工学最大の傑作と称しただけのことはある。

歩行という運動は体重の2割増の力が足にかかるといわれている。つまり体重60㎏なら72㎏、現代人は一日平均6・5㎞歩くとされており、トータル540トンの重みに耐えている計算になる。
この衝撃を守ってくれる存在が小指の付け根、親指の付け根、そして踵の3点を結ぶ靭帯=アーチだ。
衝撃を吸収するバネの役割を果たすが、酷使すればその機能は低下する。これをサポートするのが靴である。前述の構造を知り、シーンに応じた履き分けを心掛けるのはもちろん、購入前のフィッティングも大切だ。
靴選びで忘れてはならないのが、自分のサイズを知ることだ。自称サイズが当てにならないということもあるが、履き心地はフォルムや使用している部材によっても変わってくるからだ。また、顔の造作が左右で異なるように、足も左右が均一ということは稀だ。
これは意外に知られていないが、国によって表記が異なる、ということもある。靴は捨て寸といって足の運動領域を計算に入れてつま先に余裕をもたせる設計となっているが、日本では足入れサイズを表記するのに対し、海外ではラストの全長を表記するのが一般的なのだ。
以上のように、試し履きは決してなおざりにできない行為である。きちんと両足履き、歩いてみることは足を守るためのルールなのである。

サイズを測る
本文でも解説したように、自称サイズは当てにならない。まずはきちんと計測しよう。

紐を緩める
シューレースはきちんと緩める。ムリに足を突っ込むと靴の寿命を縮めることになる。

シューホーンを使う
踵には芯材が入っているとはいえ、保護するためにはシューホーンを添えてやるのは欠かせない。

踵に沿わせる
足をホールドする要となるのが踵から土踏まずにかけて。踵はしっかり沿わせよう。

羽根の開き具合を見る
メーカーによっても異なるが、羽根の開きは1㎝前後となるよう設計されている。

土踏まずの吸い付き
土踏まずのフィット感を確認。ここが浮くようだと、疲れの原因となるのできちんと確認を。

ボールジョイントの位置
足を踏みつけたとき、屈曲する箇所。足と靴の位置が合っているかをチェック。

ボールジョイント部の高さ
ボールジョイントは周り寸法が合っていることも大切。適度なフィット感が必要とされる。

指先のあき具合
つま先には捨て寸と呼ぶゆとりが必要でつま先が当たってないことも確認する。

踵のフィット感とトップラインの位置
踵が合っているか、トップラインが外くるぶしに当たっていないかを確認する。

踵の浮き、並びにその他不具合がないか
実際に歩いてみて、以上の点で不具合がないかを確認し、問題がなければオーケーだ。