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デザインだけではない、婦人靴の選び方 - タイプで選ぶ
婦人靴は大別すればパンプス、サンダル、ブーツとなる。 それぞれのチェックポイントを見ていこう。
安定した歩行には婦人靴に欠かせないヒール選びを慎重に行うことが大切だが、甲革の意匠、つまりデザインもまた、軽んじてはいけない部分だ。
単純な話、足が靴にホールドされれば安定するわけで、いかに甲を覆った形状を有しているか、がポイントになる。このセオリーに則るならば、ブーツはもっとも安定性が高い。次に高いのがパンプスだが、トップライン(履き口)が例えば指股がのぞくほど浅いタイプは安定性にかける。ご推察の通り、サンダルのアベレージは低い。
デザインによっても履き分ける習慣を身につけることが何よりだが、チェックすべきポイントもそれぞれで異なってくる。留意したい点を紹介しよう。
【ブーツ】・Boots
甲のみならず、ふくらはぎまで覆うブーツはもっとも安定感が高い。とはいえ踵をしっかりホールドし、つま先にゆとりがある構造は靴選びの最低条件だ。ブーツに欠かせないファスナーの仕様はサイドファスナーのタイプがスムーズな着脱を考えるとベターだ。

【パンプス】・Pannpus
ヒール寸がそこまで高くなければ問題はないが、指股が見えるほどトップラインが浅いタイプは避けたい。履き込むと革はどうしても伸びてくるので、踏ん張りがきかなくなり、疲れやすい。試し履きの際は気付きにくい部分なので注意が必要だ。

【サンダル・ミュール】・Sandal&Mule
足を覆う面積の少ないサンダルはもっとも靴選びを慎重にしたい。前に滑らないよう、ストラップなどできちんとホールドするタイプであることが肝要だ。踵のないミュールの場合はトップライン(履き口)が深く、甲を包み込んでくれるタイプを選びたい。

婦人靴と革の関係
原皮、なめし、色、加工それぞれにバリエーションがあり、まさに百花繚乱の感もあるのが革の魅力だ。
婦人靴はその魅力を最大限生かしたアイテムといえる。

どんなに科学が発展しても、靴の材料として革に勝るものはない。通気性があり、足に馴染み、そして耐久性に富んだ特性はこれ以上ないほど靴に向いている。そもそもが肉食文化の副産物であり、天の恵みを余すことなく活用しようとした先人の知恵には大いに敬意を表すべきである。
皮は剥いだ状態で放置すると腐る。これを防ぐための工程がなめしだ。人間が最初に発見した化学変化であり、その歴史は60万年前にまで遡れるといわれている。
煙で燻す、噛む、動物の脳みそや脂をこすり付ける、草木の汁に漬け込むなどの試行錯誤を経て、植物の渋を利用したタンニンなめしと化合物を利用したクロムなめしというふたつのなめし製方法が確立した。
近代的設備が整ったことで、現在ではさまざまな革が存在する。しかし残念ながら、紳士靴の場合は色は黒茶、種類も表革かスエードくらいしか存在せず、いささか面白味に欠ける。そのバリエーションの豊富さ、華やかさに関しては圧倒的に婦人靴に軍配が上がる。アッパーに使われる代表的な革を紹介しよう。