Column

革の基礎知識 Basic knowledge of Leather

革の基礎知識

革製品の見方 - 靴を知る

革製品の中でもファンが多い、革靴。靴選びがもっと楽しくなる基礎知識を紹介しよう。

Point_2  製法を知る

グッドイヤーウェルト
Goodyear welt process

機械を使用した製靴法として最も古く、現在でも紳士靴の代表的な製法。まずアッパー、ウェルト(細い革片)、中底のリブ(レール状のパーツ)をすくい縫いし、次にウェルトとアウトソールを出し縫いで接合する。複雑な工程を経るだけに安定性があり、型崩れもせず履き心地も良い。外観は一般にコバが出ていて重厚な印象を与える。高級靴の製法としてファンは多い。

マッケイ
Mckay process

アッパーと中底、アウトソールを一緒に通し縫いする製法。ウェルトのように媒介する部分が無く最小限のパーツで構成されるため、軽量でソールの返りも優れた仕上がりになる。また、コバを狭く抑えられることでドレッシーなシルエットをつくることができる。ただし、アウトソールから中底まで底縫いが通っていることから、雨天時には水が染み込みやすい。

ステッチダウン
Stitch-Down process

グッドイヤーやマッケイとは異なり、アッパーのエッジを足型に沿って外に張り出させ、外周をソールとともに縫い付ける製法。外見上は出縫い糸が露出し、コバにアッパーの断面とアウトソールの断面が重なって見える。仕上がりは軽く屈曲性に優れコストもかからないため、カジュアルな靴に多く用いられる。ただし、修理にはオリジナルの足型がないと難しいとされる。

グッドイヤーウェルト製法における断面図。中底にコルクが厚く詰められているのも特徴だ

[Column] 足に合った靴と出会うために知っておきたいこと

人間は日常的に歩行する動物だ。だからこそ、自分に合った靴との出会いは、毎日の暮らしを豊かにすると言っても過言ではない。とはいえ、革靴には多種多様なスタイルがあり、探す楽しみとともに選ぶ難しさも存在する。そこで、自分に合った靴選びのポイントを「履きやすさ」の視点で挙げておきたい。まず、踵部分がしっかりと固定されていること。ここは歩行の起点となるので安定感が重要だ。そしてつま先にほどほどのスペースがあること。また、土踏まずがフィットしていることも大切な要素だ。女性の場合は、ヒールもチェックポイント。地面に対して平行であるか、高さや太さは適当かを見ておくことが、良き足のパートナーとの出会いにつながる。

Point_3  タイプを知る
MEN'S
キャップトゥ

キャップトゥ

つま先に横一文字の切り替えが入ったキャップトゥは、ビジネスからフォーマルな場まで幅広く活躍してくれる。ストレートチップとも言う

セミブローグ

セミブローグ

穴飾りがある靴をブローグと呼び、セミブローグは穴飾りが一文字状のもの。華があるスタイルで、ビジネスシーンで愛用されている

モンクストラップ

モンクストラップ

ビジネスからカジュアルまで使えるモンクストラップは、バックル留めのストラップが特徴。欧州の修道士(モンク)が履いていたことが語源

スリッポン

スリッポン

革靴の中で最もカジュアルなスリッポン。紐やバックルを使わずに気軽に履ける革靴だが、フォーマルでも通用するプレーンなものもある

LADIE'S
サンダル・ミュール

サンダル・ミュール

足が露出した開放的なサンダルは、カジュアルからドレッシーなものまで揃う。ミュールを選ぶ際には履き口の深さがあるものが◎

ブーツ

ブーツ

ふくらはぎまで覆うブーツは最も安定感がある。長さに種類があるが、トレンドによりつま先やヒールの高さが変化する

パンプス

パンプス

紐を用いずに履く浅い靴で、元々は舞踏会で使われていた。婦人靴で最もメジャーな靴だけあって、さまざまなデザインがある

[Column] 富と権威の象徴からファッションアイテムへ

人類が靴を履くようになった時期は判然としないが、少なくとも古代文明では富と権威の象徴として捉えられていたようだ。例えば、かの有名なツタンカーメン王の墓からは黄金のサンダルが出土し、ローマ皇帝は「ムレウス」という特別な靴を履いていた。しかし、時代を経るごとに靴は庶民の間に広がり、徐々に色彩豊かで刺しゅうが散りばめられたファッションアイテムへと進化していく。その原動力はやはり女性で、16世紀の終わりにはヒールが登場し、フランス革命後は自由な精神と技術の発展により現在の靴の原型が出揃った。いつの時代も、ファッションをリードするのは女性ということなのかもしれない。